【特集】120kg級に最強の留学生! 小幡邦彦・新コーチの下で東日本学生リーグ戦V2に燃える山梨学院大【2009年5月日】



 ゴールデンウィークも終わり、聞こえてくるのが東日本学生リーグ戦の足音だ。今年は5月20日から22日まで東京・駒沢体育館で行われる。昨年は山梨学院大が優勝候補の日体大を決勝でストレートで下し、7年ぶり3度目の優勝を遂げた(右写真=胴上げされる下田正二郎部長)

 そのメンバーの中から、60kg級の前年の全日本選抜王者の大沢茂樹(現総合格闘家)、74kg級で主将を務めた奈良部嘉明(現山梨学院ク)、96kg級で全日本選抜王者に輝くことになる山本雄資(現警視庁)の主力3選手が抜けた。しかし切り込み隊長の小俣将太や66kg級の森川一樹(全日本選手権2位)、昨年四冠王のロシアからの留学生・120kg級のボリス・ムジコフらが在籍。先鋒、中堅、大将と主要ポイントは確実に白星が計算できる布陣が組めそうだ。

■全日本チャンピオンの小幡邦彦がコーチに就任

 高田裕司監督(日本協会専務理事)が長年率いる山梨学院大に今年は新しい風が吹いている。3月までALSOK綜合警備保障に所属していた2004年アテネ五輪代表の小幡邦彦が、4月から山梨学院大職となりコーチとして選手のサポートに入った。現在の選手指導は主に小幡コーチが行っている。

 小幡コーチの最大の魅力は、5ヶ月前に全日本王者に輝いたという“若さ”だ。昨年12月に有終の美を飾って現役を退いたとはいえ、まだ28歳。学生選手と同じメニューをともにこなし、選手と組み合うことで、じかに弱点を指摘する指導でリーグ戦の準備をしてきた。

 小幡コーチは「教えるのは大変です」と話し、初体験の指導に苦労していることを吐露したが、「ゴールデンウイークに警視庁と自衛隊の選手が合宿に来てくれ、いい練習ができました。去年の優勝メンバーは闘い方も知っていますし、十分に優勝は狙えると思います」と、チームの仕上がりに自信をのぞかせた(左写真=選手を指導する小幡邦彦コーチ)

 その気持ちに慢心はない。「私の時は学生チャンピオンが4人もいたにもかかわらず、日体大に負けたことがあります。リーグ戦は何があるか分かりません」。小幡コーチは自身の経験を生かして優勝への作戦を練っている。

■55kg級・小俣将太、66kg級・森川一樹、120kg級・ムジコフで必ず3勝!

 小幡コーチが、まず期待を寄せるのが、55kg級の小俣だ。「最初が肝心ですし、学生チャンピオンの日体大・守田(泰弘)には2勝0敗と相性がいいのです(2007年全日本選抜選手権予選、同年東日本学生秋季新人戦)」。さらに、「森川とボリスは、(今年も在籍している他大学の)学生に負けていません」と言う。この3人で3勝を常に計算し、それ以外で1勝を挙げれば、最低でも4−3で勝ち進むことができる。

山梨学院大の予想メンバー
階級 選手 学年 主な成績
55kg級 小俣 将太 4年 全日本学生選手権ベスト8
60kg級 小俣 涼平 2年 東日本学生春季新人戦55kg級2位
66kg級 森川 一樹 4年 全日本選手権2位
74kg級 橋本雄太朗 4年 全日本学生選手権ベスト8
84kg級 小室 直人 4年 全日本学生選手権3位
96kg級 渡辺 瑞基 4年 全日本学生選手権グレコ3位
120kg級 ボリス・ムジコフ 4年 学生四冠王

 チームのエースとして活躍が期待される森川やボリスも調子は良さそう。森川は「楽しく、練習どおりにやれたらいいです。それが課題です」と、技術より精神面がカギ。

 昨年、1敗もせずにシーズンを終えたボリスは、学生のラスト・シーズンが待ち遠しい様子。特に楽しみにしているのが、今月初めにタイで行われたアジア選手権3位の荒木田進謙(専大)との対戦だ。「(昨年11月の)全日本大学選手権では荒木田にフォールで勝ちましたし、一番楽しかったです。今年も勝つ自信はあります」と日本の重量級エースに“果たし状”を突きつけた。

 確かに、昨年の荒木田との対戦は4戦4勝と勝率10割。3年前は荒木田に歯が立たなかったが、今では箱根駅伝のメクボ・ジョブ・モグス(山梨学院大に在籍していたケニアの選手)のような“最強留学生”の存在にまで成長した。「当たりまえのように勝ちたい!」と鼻息を荒くするボリスに勝負が回ったら、120パーセントの確率で山梨学院が勝利を収める?

■昨年の屈辱をバネに主将として燃える橋本雄太朗

 昨年のリーグ戦決勝で優勝を決めたのは、主将を務めた74kg級の奈良部だった。山梨学院大の今年の主将も、同級の橋本雄太朗が務める。高田監督の方針で、同大学は昔から学生投票で主将を決めている。昨年の投票では、主力で高校時代からエリートだった森川や小俣を抑えて主将に選ばれたのが橋本だ。宮城。宮城工高出身で、最高成績は昨年インカレのベスト8。タイトルはないが、小幡コーチは「練習はまじめで、練習を引っ張ってくれる。私も助けてもらっています」と話し、信頼も厚い。

 橋本主将は昨年の優勝は「うれしかった」と振り返るが、個人的には悔しさが残っている。予選リーグ1回戦で群馬大にまさかの黒星を喫したことだ。主力を温存したためもあったが、チームにとっては痛い一敗だった。橋本現主将はその試合にエントリーされ、しかもチーム2敗目の黒星をつけられてしまっていた。

 主将&主力として臨む今大会は、昨年のような負け方は許されない。「前に出るレスリングで、受けに回らないようにしたい。エースの森川に続いて勝てるように」と抱負を語った。王者・山梨学院はV2に向けて視界良好だ(右写真:V2へ向けてチームを支える橋本雄太朗、ボリス・ムジコフ、森川一樹=左から)

(文・撮影=増渕由気子)


 ◎東日本学生リーグ戦日程

 【期日】5月20日(水)〜22日(金)

 【場所】東京・駒沢体育館

 【組み分け】

◆一部A=山梨学院大、専大、拓大、国士大、中大、明大、青学大、東農大

◆一部B=日体大、早大、日大、東洋大、群馬大、大東大、神奈川大、法大

◆二部A=立大、八戸工大、慶大、国際武道大

◆二部B=防大、東海大、東北学院大、東大

 【大会日程】

 【5月20日(水)】
開始時間 回 戦 Aマット Bマット Cマット Dマット
11:00 一部B 1回戦 日体大−法 大 早 大−神奈川大 日 大−大東大 東洋大−群馬大
12:00 一部A 山梨学大−東農大 専 大−青学大 拓 大−明 大 国士大−中 大
13:00 一部B 2回戦 日体大−神奈川大 早 大−法 大 日 大−群馬大 東洋大−大東大
14:00 一部A 山梨学大−青学大 専 大−東農大 拓 大−中 大 国士大−明 大
15:00 一部B 3回戦 日体大−大東大 早 大−群馬大 日 大−法 大 東洋大−神奈川大
16:00 一部A 山梨学大−明 大 専 大−中 大 拓 大−東農大 国士大−青学大
 【5月21日(木)】
開始時間 回 戦 Aマット Bマット Cマット Dマット
10:00 一部B 4回戦 日体大−群馬大 早 大−大東大 日 大−神奈川大 東 洋−法 大
11:00 一部A 山梨学大−中 大 専 大−明 大 拓 大−青学大 国士大−東農大
12:00 二部A・B 1回戦 立 大−国際武道大 八戸工大−慶 大 防 大−東 大 東海大−東北学院大
13:00 一部B 5回戦 日体大−東洋大 早 大−日 大 群馬大−法 大 大東大−神奈川大
14:00 一部A 山梨学大−国士大 専 大−拓 大 中 大−東農大 明 大−青学大
15:00 二部A・B 2回戦 立 大−慶 大 八戸工大−国際武道大 防 大−東北学院大 東海大−東 大
16:00 一部B 6回戦 日体大−日 大 早 大−東洋大 群馬大−神奈川大 大東大−法 大
17:00 一部A 山梨学大−拓 大 専 大−国士大 中 大−青学大 明 大−東農大
 【5月22日(金)】
開始時間 回 戦 Aマット Bマット Cマット Dマット
10:00 二部A・B 3回戦 立 大−八戸工大 慶 大−国際武道大 防 大−東海大 東北学院大−東 大
11:00 一部B 7回戦 日体大−早 大 日 大−東洋大 群馬大−大東大 神奈川大−法 大
12:00 一部A 山梨学大−専 大 拓 大−国士大 中 大−明 大 青学大−東農大
13:00 二部 決 勝        
14:30 一、二部入れ替え戦        
15:30 一部 決 勝        


《前ページへ戻る》