【特集】2012年ロンドン五輪を見据えて本格始動! 本来の60kg級に出場する笹本睦(ALSOK綜合警備保障)【2009年6月17日】



 2000年シドニー五輪から3大会連続で五輪に出場をした笹本睦(ALSOK綜合警備保障=右写真)が、6月20〜21日の全日本選抜選手権(東京・代々木競技場第二体育館)に本来の階級の男子グレコローマン60kg級でエントリーした。

 昨年12月の天皇杯全日本選手権では66kg級に出場して現役を続行した。結果は2回戦敗退。「全日本選抜選手権も66kg級で出ます」とリベンジ宣言をするとともに、当分は60kg級に落とさないことを話していた。

 だが、それから半年。笹本は60kg級に戻ってきた。当初の予定より早く、本来の階級に戻した理由は、「豊田先輩(雅俊=警視庁コーチ)など周囲の人や会社の人に勧められたから」。それに加えて「66kg級では世界で勝てない」ということが決め手となったようだ。

■軽量級の全日本トップ選手と毎日のように練習

 2007年には世界選手権で銀メダルを獲得し、あとは金メダルを取るだけだった。今回60kg級にエントリーしたのは、今年こそ世界制覇の気持ちが出てきたからかと思われるが、「世界2位って、もう2年前の話だよ。今すぐに世界とかは見ていない」ときっぱり。「今回は国内での自分の位置を確認するために出場する。オリンピックの状態が100とすれば、今は20くらいの状態。自分の中で100パーセントの状態に戻っていない」と、一からの出直しを図るようだ(左写真=全日本選手権66kg級で敗れ、照れ笑い?の笹本)

 現在の練習拠点の日体大は、5月のアジア選手権(タイ)グレコローマン55kg級金メダルの長谷川恒平(福一漁業)や、同60kg級3位の佐藤亮太(カンサイ)、さらに昨年の全日本選抜選手権王者の北岡秀王(クリナップ)や、全日本選手権2位の実績を持つ松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)らの練習拠点でもある。グレコローマン軽量級の層が厚い。

 伸び盛りの選手らと毎日手合わせすることで、笹本は「肉体的にも精神的にも自分が落ちている」と、自分のレベルが手に取るように分かる。調整に失敗すれば、10年ぶりに本来の階級で国内選手に負けるかもしれない。そんなリスクを背負いながら、なぜ笹本は60kg級に出場するのか。その答えは、“オリンピック”にあった。

 「北京五輪でメダルが取れなかったし、悔いが残っている。もう一回やりたいという気持ちがある。やるからにはロンドン五輪までやる。ロンドン五輪に行けなくても、そこまで挑戦できていれば、その過程で満足できると思う」。レスリングは五輪イヤーを除いて毎年世界選手権があり、シドニー五輪から北京五輪まで体を休めるシーズンはなかった。これからの笹本は2012年ロンドン五輪に絞って照準をあてていく。

■「周りにもうダメだと言われても、ロンドンまで続けます」

 「体力は落ちたけど、それをカバーして自分の路線を作っていけばいいかなって。自分の中で、(ロンドン五輪に)行けるという自信があるので、(今、現役を引退し、あとで)、行けたかもしれないのにと思うのが嫌だから。最終的に代表になればいい。全日本選抜選手権で負けても、(現役は)辞めない。途中で辞めるなら、今辞めたほうがいい。周りに(笹本は)もうダメだと言われても、ロンドンまで続けます」と、3年スパンで競技に取り組むことを決意した。

 北京五輪後もレスリングに集中できる環境を提供してくれる会社への感謝も忘れない。「大橋(正教)監督のためにも頑張らないと」。若手の伸びが著しいことは百も承知だが、会社のためにも負けられない。「やるからには負けたくない。負けるつもりはない。優勝すれば、プレーオフも勝つでしょう」と最後は笹本節で締めてみせた(右写真=日体大練習する笹本)

 明確な目標を定めないまま現役続行宣言をした12月の全日本選手権から半年。笹本は再び五輪を見つめて走り出した。

(文=増渕由気子)


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