【全日本選抜選手権優勝選手】グレコローマン120kg級・新庄寛和(自衛隊)【2009年6月21日】

(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫)


 グレコローマン120kg級でしのぎを削り合ってきた新庄寛和(自衛隊)と中村淳志(カンサイ)。世界選手権のキップを手にしたのは新庄だった。

 昨年のこの大会でV2を達成した新庄だが、年末の天皇杯全日本選手権では、この日の決勝の相手である中村に苦杯を喫してしまい、今年冬の世界遠征には中村に譲る形となった。その中村が2月のニコラ・ペトロフ国際大会(ブルガリア)で3位入賞をいう結果を知ると、「日本人選手が活躍してうれしいというのはありましたが、悔しいという気持ちのほうが強かったです」という思いに襲われた。

 過去2度の優勝よりも格別にうれしい戴冠だろう。何しろ、世界選手権でリベンジする機会を自分の実力で勝ち取ったのだから…。そんな新庄だが、9月の世界選手権に出場するためには、この日は優勝とプレーオフ勝利という連勝が義務づけられていた。その思いをプレーオフの第3ピリオドで爆発させた!

 まずは決勝戦から振り返る。天皇杯王者の中村に“挑む”形となった新庄。第1ピリオドは両者ポイントなく、グラウンド状態で中村の攻撃となったが、新庄が守り切ってこのピリオドを取った。第2ピリオドのグラウンドの攻撃で新庄はローリングに成功。第2ピリオドも制し、まずは大会の優勝を決めた。

 全階級の決勝戦が終わり、唯一のプレーオフとなった新庄と中村の雌雄を決する闘いが始まった。本戦での優勝を決めた新庄のほうがプレッシャーは少なかったかもしれない。両者ポイントが入らず、中村のグラウンドの攻撃を新庄が守り切ったところまでは、本戦とまったく同じシーンだった。だが、第2ピリオドは新庄のグラウンドでの攻撃を中村に守り切られ、ピリオドスコア1−1のイーブンへ。決着は第3ピリオドへと持ち越された。

 ここでもスタンド戦は0−0へ。運命を分けるボールピックアップでグラウンドでの攻撃権を得たのは新庄。「あそこで回せなかったら負けですから、思いっきりいきました」と試合後に新庄は語ったが、こん身の力を込めたローリングを決めた新庄がプレーオフを制し、世界選手権の出場権を獲得した。


 ◆新庄寛和の話「うれしいですね。世界選手権の代表になることを目標にして、練習を重ねてきましたから。前回の世界選手権は1回戦負けという結果だったので、リベンジしたいです。自分は加藤賢三先輩(北京五輪96kg級代表)という素晴らしい方と練習させていただいてきました。加藤先輩とも話しているのですが、『日本の重量級は世界では通用しない』という言葉を世界選手権で覆してやりたいと思ってます」


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