【特集】世界チャンピオン相手に首投げでフォール勝ち…女子59kg級・山名慧(アイシン・エイダブリュ)【2009年6月21日】

(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫)


 2008年の天皇杯全日本選手権の覇者・山名慧(現アイシン・エイダブリュ)と2009年全日本女子選手権チャンピオン・正田絢子(京都・網野高教)の間で行われた女子59s級の世界選手権代表決定プレーオフは、山名が世界V4の実績のある正田を下し、世界選手権初出場を決めた!

 「正田さんは、パワーがあるだけでなく、飛行機投げとかビッグポイントの大技を得意にしている。自分のレスリングの持ち味であるタックルや崩しでいくしかないと思っていた」という山名だが、第1ピリオドは自分の思い描いた動きができない。

 腕を取り合う攻防から、正田が再三片足タックルを仕掛け、両足タックルに切り替えるとバックに回って1ポイントを先制する。山名もがぶって自分のレスリングにもっていきたいが、第1ピリオドは1−0で正田が制した。

 第2ピリオドも腕を取り合う攻防が続く。山名のタックルのフェイントにも動じない正田。残り30秒で山名ががぶって崩しにかかるが、両者ポイントなく、ボールピックアップで攻撃の優先権を得た山名がきっちりタックルからバックに回り、2ポイント獲得してピリオドスコアを1−1とした。

 第3ピリオド、山名が横から入る片足タックルで1ポイントを獲得。ポイントを返そうと正田が前に出る。「前に出てくると思ったので、いくしかないと思った」という山名のカウンターの首投げが決まりビッグポイント。そのままフォールを決め(左写真)、山名が正田の世界選手権連続出場の夢を打ち砕いた。

 全日本で王者についたものの、今年の全日本女子選手権で敗退し、5月のアジア選手権(タイ)の権利まで失ってしまった山名。国内最強の敵を自らの手で下したことは大きな自信になる。しかも自分が倒した相手は現役の世界チャンピオンだ。今回が世界選手権初出場とはいえ、「自信をもって臨んで勝ってきたい」という山名の言葉を信じる!


 ◆山名慧の話「全日本女子選手権で負けてしまってから、落ち込んでばかりもいられないので、正田さんに勝つことだけ考えて練習してきました。自分はあまり投げ技は得意ではないのですが、あの場面ではいくしかないと思いました。第1ピリオドは自分でも動きが良くないと思っていたのですが、次第に動けるようになり、第3ピリオドになると気持ちも落ち着いて自分本来のレスリングができたと思います。初めての世界選手権ですが、正田さんという世界チャンピオンに勝ったことですし、自信をもって臨んできたいと思います。」


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