【特集】鹿児島から茨城に“留学”した折田…親子そろって笑顔のインターハイに【2009年8月5日】

(文=増渕由気子)



 インターハイ学校対抗戦でV20を達成した霞ヶ浦(茨城)。大会MVPは55s級の森下史崇が獲得したが、大沢友博監督が選ぶMVPは50s級の折田誠治だった。

  強豪・霞ヶ浦ほどのチームになると、全国津々浦々から選手が集まる。全寮制で、選手たちは15歳から親元を離れて自立した集団生活を始める。両親にとっては「寂しい」の一言に尽きるだろう。 今年の霞ヶ浦のベストメンバーの出身地は、50s級の折田誠治が鹿児島、66s級の砂川航祐が大阪、120s級の前川勝利が北海道で、他の4人は地元の選手。

 50s級の折田の母・眞弓さんは「帰省はお盆と正月だけ。お休みは全部で4日ありますので、賞味3日ですね」と話す。高校進学で鹿児島から遠くはなれた茨城に“留学”すると提案があったときは「反対しました」と振り返った。 「誠治の兄もレスリングをやっているんですが、誠治は優しい子だったので」と、手元から離れることを心配した。さらに競技レベルの高い霞ヶ浦では、どんなに頑張っても、3年間でレギュラーを取れるかどうかもわからない。茨城留学は一種の“かけ”だった。

 50s級は昨年まで高校2冠王の森下がレギュラーを張っており、折田は控え選手にとどまった。森下が階級を上げたあと、50s級のレギュラーに定着したが、折田は森下が作った輝かしい記録と闘うことになる。折田は「比べられるのが嫌だった」とライバル心をむき出しにして練習を積んできた成果が実って、春の全国高校選抜選手権では、1敗もせず学校対抗戦の優勝に貢献した。「折田がいて心強い」と、森下ら後に続く階級の選手が信頼を寄せるほどまで成長した。

  その姿は母の眞弓さんにもしっかり伝わった。「成長したと思う。ここまで育ててくれた大沢先生に感謝、感謝です。お母さん方との交流も楽しかったですし、霞ヶ浦に進学させたことに後悔はありません」。

 年に3日しか子供が家に戻ってこないため、家族旅行などはしたことがないという。それでも「遠征が親にとっては旅行みたいなもの。楽しい3年間でした」と眞弓さんは笑顔を見せた。インターハイ直前には、毎年、父母会で千羽鶴を折って勝利の願掛けをするなど(右写真)、霞ヶ浦の父兄たちの結束力は生徒にも勝るとも劣らない。

 そんな父母会の応援が霞ヶ浦V20の後押しとなったことは間違いないだろう。


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