【特集】創部2年半の環太平洋大から2人のチャンピオンが誕生【2009年9月16日】

(文・撮影=増渕由気子)



 全日本学生選手権の女子では、創部3年目の環太平洋大から48s級の明尾弥紀と59s級の伊藤友莉香が優勝。ともに1年生で学生チャンピオンの座を射止めた(右写真=環太平洋大の学生チャンピオン第1号になった明尾)

 嘉戸洋監督は「アジア・チャンピオンのの伊藤は、当然学生チャンピオンにならなければ」と、優勝を最低条件としたが、選手層も厚く、世界ジュニア選手権などの日本代表経験選手が多い48s級を制した明尾にも、「期待していたとおり、最高のレスリングをやってくれた」と笑顔を見せた。

 両者ともに京都・網野高出身で、全国中学校選手権優勝の経験があるエリート選手。昨年まで男子グレコローマンのナショナルチーム・コーチとして世界を飛び回っていた嘉戸監督の目には「スパーリングで強くなるレベルではない」と映っていた。そのため、「練習は技術練習が中心」と、練習時間の大半をそれに割いてきた。

 その効果があって、技の精度はピカイチ。明尾の決勝戦では、早大の藤川千晶からアンクルホールドで突破口を開くと、第2ピリオドもタックルからのワンツー攻撃を決めてみせた。「アンクルしかできない…」と明尾は謙そんしたが、アンクルホールドは高難度の技。嘉戸監督の強化方針が、ぴたっとはまった格好だ。

 一方、伊藤も59s級で貫録の勝利。「梶田(瑞華)先輩など、強い選手が他の階級に出場してしまった」と、わずか4選手のエントリーでの優勝に大満足というわけにはいかなかったが、1年生でのタイトル獲得にひとまず安堵した様子(左写真=決勝でガッツレンチを決める伊藤)

 伊藤は今年4月の全日本女子選手権で決勝に進出し、世界ジュニア選手権未経験のままシニアのアジア選手権代表に抜てきされた。初物づくしの海外遠征で、いきなり優勝を成し遂げ、8月の世界ジュニア選手権でも銅メダルを獲得した新星だ。

 6月に全国中学校選手権男子59s級で優勝した弟・和真を引き合いに出すと、「体重も一緒だし、弟には負けたくない!」とライバル心を燃やし、さらなる飛躍を誓った。

 創部から2年半で学生チャンピオン2人を輩出した同大学。強さの秘密は、嘉戸監督の強化方針にヒントがあった。「(どんなところにいても、どんな人でも)時間は平等にあるし、限られている。それをどう使うかが問題」。新設大学で、しかも部員数はひとケタ。その中で嘉戸監督の思い切ったカリキュラムでチャンピオンを輩出した。

 優勝選手数は名門・中京女大と同じ2階級。群雄割拠の時代の足音が聞こえてきた。


明尾弥紀(左)と伊藤友莉香 嘉戸洋監督(後列右)と選手たち

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