【特集】フリースタイルはワセダの風が吹き荒れる…早大が「金2、銀1」で軽量級を席巻【2009年9月18日】

(文・撮影=増渕由気子)



 全日本学生選手権(インカレ)フリースタイルで吹き荒れた風は“ワセダ色”だった。日本のお家芸といわれる軽量級からの3階級で早大が決勝に進出。55kg級の藤元洋平、66kg級の石田智嗣が初優勝を飾り、60kg級では一昨年に2年生で高校三冠王に輝いた田中幸太郎がルーキーながら準優勝に輝いた(右写真=前列左から、田中、石田、藤元)

■「学生王者に輝いて集合写真を撮る」という夢がかなった…藤元洋平

 早大トリオの先陣を切ったのは藤元。2年前には、新人戦でMVPを獲得し、同級のホープとなったが、学生タイトルに本格的に挑戦した昨年は2位や3位に終わり、「勝てないのが辛くて悩んでいた」という。最後のインカレを迎えるにあたり、今までのレスリング人生を振り返ってみた。「勝とう、勝とうと、優勝カップを手にすることを目標にした試合は勝てなくて、1試合ごとに勝ち名乗りを上げることを目標にした大会では、いい成績を収めていたことに気づいたんです」。

 この定義にのっとり、気負わず、いつもどおりをテーマにし、“優勝”という目標は掲げていなかった。兄で元全日本学生2位の愼平からは「ほどほどに頑張れ」とメッセージがメールで届いたのもあり、「力を抜いてやろう」と脱力レスリングを敢行した。

 それが功を奏した。得意のタックルは余計な力が入らず、それによって切れが増し、危なげなく決勝に勝ち上がった。決勝の相手は小俣将太(山梨学院大)。「キッズ時代はともかく、高校から一度も対戦したことがない」相手だった。不安だったのは、自らがこの4年間、白星を分け合ってきた昨年の学生二冠王の守田泰弘や猪俣大志(ともに日体大)の両者に勝って決勝進出をしてきたことだ。

 「不気味な存在だった」と第1ピリオドは見合ってしまってクリンチにもつれたが、優先権を生かして確実にテークダウンを奪うと、余裕が出てきた。第2ピリオドの後半には、鮮やかなタックルがズバっと決まって貴重な1点をゲット。そのまま逃げ切って試合終了のブザーを聞いた(左写真)

 「僕が1年生のとき、佐藤吏先輩(現ALSOK綜合警備賞)がインカレでV3を達成しました。その時、吏先輩を囲んでみんなで集合写真を撮ったんです。それを自分もやってみたかった」。閉会式後、笑顔で部員達と写真撮影。「1年のときの夢がかないました」と藤元は最高の笑顔を見せた。この優勝で、ラストシーズンを満足するつもりはない。「全日本学生王座決定戦(9月25日)、全日本大学選手権(11月14〜15日)、そして天皇杯(12月21〜23日)で有終の美を飾りますよ」。藤元のラストイヤーの戦いは幕を開けたばかりだ。
 
■激戦区の66kg級を鉄壁のディフェンスで制した石田智嗣

 128人がエントリーした史上最大の激戦区、66kg級は2年生の石田が制した。初優勝を決めた瞬間は、派手にガッツポーズを決めて見せたが、「内容は最悪だった。優勝したのにコーチには怒られました」と反省点が残ったようだ。

 内容が最悪でも優勝できた勝因は、鉄壁なディフェンス。大会通じてテークダウンを許さず、失点は準決勝の志土地翔太(日体大)にクリンチで失った1点のみという内容だった。「自分はバランスが悪いので、片足でこらえる前に、足を動かして構えを崩さないようにします」。ウィークポイントを逆手に取った作戦が功を奏しているようだ(右写真=決勝で闘う石田)

 だが、オフェンスに関しては思ったような動きができなかった。「今後は攻める形をとれるようにしたい」とタックルなどの飛び道具の強化と、攻める勇気を持つことを課題に挙げた。 
 
■ルーキーで決勝進出も快挙ならず2位…田中幸太郎

 高校三冠王の肩書を引っさげて早大に鳴り物入りで入学してきた田中幸太郎のインカレデビューは準優勝だった。準決勝では、2年先輩で昨年2位の松本桂と熾烈な同門対決を強いられるも、第3ピリオドに5点技を決めて決勝に進出。早大初の1年生王者に期待がかかったが、元全日本選抜2位の小田裕之(国士舘大)にストレートで敗れた。

 和製ジョン・スミスとも言われるほど高精度のローシングルタックルは、先輩レスラーたちにも面白いようにかかったが、小田だけは別格だった。開始早々に出した左のローシングルはバックステップで見切られ、その後の低空タックルは、懐に飛び込んで小田の体を持ち上げるところまでは決まったが、うまく返されて失点。(左写真=第1ピリオド、場外に出せれて痛恨の1失点)「入ってからタックルが通用しなかったのは初めて」と大学レベルの高さを痛感した。

 田中の雄姿を一目見ようと、観客席には両親の姿も。銀メダルの結果は、ルーキーにしては上出来な結果と言える。だが、田中は高校2年で三冠王になるも、3年はけがによる不調で無冠。妹の亜里沙(埼玉栄)も、三冠を狙った今年8月の全国高校女子選手権で試合中のけがによりタイトルを逃した経緯がある。そのため「(優勝)できるときにしておかないと」とV逸にやや肩を落としていた。


《iモード=前ページへ戻る》
《トップページへ戻る》
《ニュース一覧へ戻る》
《ニュース一覧(2008年以前)へ戻る》