吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)西牧未央(中京女大)が優勝…世界選手権第4日【2009年9月24日】



 【ヘルニング(デンマーク)樋口郁夫、撮影=矢吹建夫】世界選手権第4日は9月24日、当地で女子3階級が行われ、55kg級の吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)と63kg級の西牧未央(中京女大)が決勝へ進出。吉田が今年のゴールデンGP決勝大会3位のソナ・アメドリ(アゼルバイジャン)を2−0(3-0、TF6-0=1:16)で破り、西牧が昨年の世界選手権決勝の相手のルボフ・ボロソワ(ロシア)2−0(1-0,10-1)でそれぞれ破り、優勝した(右写真:西牧=左=と吉田)

 吉田は2002・03・05〜08年に続いて7大会連続7度目の優勝で、五輪を含めれば世界9連覇を達成。西牧は昨年に続いて2度目の優勝。吉田の世界選手権7度優勝は、バレンチン・ヨルダノフ(ブルガリア=男子フリースタイル52kg級)が1983年から95年にかけてつくった優勝記録に並び、アレクサンダー・カレリン(ロシア)の9度優勝に続く歴代2位タイの記録。

 五輪と世界選手権を合わせた9度優勝は、カレリンの12度、アレクサンダー・メドベジ(ソ連)の10度に続き、北京五輪男子フリースタイル74kg級優勝のブバイサ・サイキエフ(ロシア)とともに歴代3位タイの記録となる。

 吉田は1回戦でマダガスカルの選手を破ったあと、2回戦で元世界チャンピオンで2004年アテネ五輪4位のアンナ・ゴミス(フランス)を撃破。3回戦で昨年の北京五輪と世界選手権で5位のアナ・マリア・パバル(ルーマニア)に勝ち、準決勝で北京五輪3位のトーニャ・バービック(カナダ)を破って決勝進出を決めた。

  西牧は初戦の2回戦で昨年世界5位のオレシャ・ザムラ(アゼルバイジャン)に勝ち、3回戦で欧州3位のステファニー・スチュバー(ドイツ)に第1ピリオドを取られる苦戦をしいられたが逆転勝ち。準決勝では、北京五輪3位で今年のアジア選手権67kg級優勝のエレナ・シャリギナ(カザフスタン)を破り、決勝進出を決めた(左写真=優勝を決め、笑顔で応援団のこたえる西牧)

 59kg級の山名慧(アイシン・エイダブリュ)は、1回戦でカザフスタンで北京五輪55kg級にしたオルガ・キオソワ(ロシア)に0−2で黒星。キオソワが2回戦で敗れたため、敗者復活戦に回れなかった。

 各選手の成績は下記の通り。


 ◎女子

 【55kg級】吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)        優勝=27選手出場

1回戦 ○[2−0(TF8-0=1:24,TF7-0=0:55]Rafaliharisolo Maminirina(マダガスカル)

 《試合経過》第1ピリオドの13秒、吉田が正面タックルを決めて3点。33秒にも正面からの片足タックルを決めて1点を追加。1分すぎ、相手のタックルをかわして1点を取り、腕をとってフォールを狙ったが、腕が棄権な角度に曲がったためブレーク。その後、相手のタックルをかわして逆に左脚を取ってカウンターアタックで3点を加え8−0へ。第2ピリオドも18秒に左脚を取っての片足タックル。横崩しで2+1点を追加。さらに55秒、正面タックル。相手はタックル返しを狙ったが、吉田はしっかりと覆いかぶさり、3点をマークして7−0とした。

2回戦 ○[2−0(1-0,2-1)]Anna Gomis(フランス)

 《試合経過》第1ピリオド、27秒に吉田が右脚を取っての片足タックルで場外に出して1点。このポイントを守り切った。第2ピリオド、13秒に正面タックルで1点を取った吉田は、45秒にも相手のタックルをがぶり、バックへ回って1点を追加。1分すぎ、タックルで攻めて場外へ押し出そうとしたが、勇み足のように自分が先に場外に飛び出してしまって1失点。そのままのスコアで勝った。

【1回戦1P】タックルで3−0と先制した吉田は、さらに攻め、34秒で4−0へ。 【1回戦2P】第2Pも開始早々の片足タックルが決まり、1点を先制。 【2回戦1P】吉田は右脚を取っての片足タックルで1点を先制。 【2回戦2P】第2Pも正面タックルが決まり、13秒で1点を先制した。

3回戦 ○[フォール、2P1:20(3-0,F3-0)]Ana Maria Paval(ルーマニア)

 《試合経過》第1ピリオド、28秒の吉田が片足タックルからのテークダウンで1点を先制し、相手はグラウンド状態から場外逃避。警告をもらって2−0となった。59秒にも右脚へのタックルを決め、3−0でこのピリオドを取った。第2ピリオドは、中盤に吉田が右足を取って倒すと、相手はどこかを痛めたらしく、そのまま抵抗なくフォールされた。

準決勝 ○[2−0(3-0,3-2)]Tonya Verbeek(カナダ)

 《試合経過》第1ピリオド、24秒に右足を取った吉田が場外に押し出して1点を先制。終盤、タックルに来た相手を受け止めると、後頭部を押さえつけて場外へ押し出して2−0へ。終了間際のバービックの捨て身のタックルを冷静にさばき、1点を加えた。第2ピリオドも吉田が片足タックルで1点を取り、アンクルホールドで1点。さらにガッツレンチで1点。しかし、その直後に立ち上がられ、場外に出されて1失点。ラスト10秒、バービックが正面タックル。持ち上げられそうになり、ヒヤリとさせられたが、吉田は必死でこらえ、場外に出ることの1失点を“選択”。2−3とされたが、残り数秒をしのいだ。

【3回戦1P】開始から28秒、片足タックルで1点。相手が場外に逃げて1点を追加。 【3回戦1P】2−0のあとの59秒にも片足タックルで1点を加えた吉田 【準決勝1P】相手のタックルをかわした吉田は、逆に左脚を取り3点目。 【準決勝2P】右脚を取ってのタックル。このあとアンクルホールドへ。

決勝 ○[2−0(3-0、TF6-0=1:16)]Sona Ahmedli(アゼルバイジャン)

 《試合経過》第1ピリオドの26秒、吉田が正面タックルから場外に出して1点。34秒に今度は右脚への片足タックルで1点。1分15秒にも正面タックルで1点を挙げた、3−0とした。第2ピリオドも32秒の片足タックル、44秒に正面タックル、1分に片足タックルと、2つを使い分けてポイントを重ね、1分16秒に片足タックルから一気に倒して3点をゲット。6−0のテクニカルフォールで勝った。

【決勝1P】34秒、片足タックルから3点を狙ったが、おしくも1点。 【決勝2P】2−0のあと、右足を取ってのタックルで3点目を獲得。 【決勝2P】最後は片足タックルからうまくテークダウンを取り、3点タックル。 【決勝2P】優勝のあとは、バック宙のパフォーマンス。会場が湧いた。

【決勝2P】栄監督と父・栄勝さんいかつぎ上げられて観客席にガッツポーズ。 【表彰式】オリンピックを合わせて9個目の世界金メダル。 【表彰式】最高の笑顔でカメラマンにポース。

 【59kg級】山名慧(アイシン・エイダブリュ)         18位(当初は19位だったが、上位選手に失格者が出て繰り上げ)=26選手出場

1回戦 ●[0−2(2-5,0-1=2:03]Olga Kiosova(ロシア)

 《試合経過》第1ピリオド55秒、山名が正面タックルで2点を先制。相手に体勢を立て直されてスタンド状態になったため、もう1度狙ったところを押し倒されて2失点。レッグホールドを受けてしまってさらに2失点。終了間際にも正面タックルを受けて1点を失い2−5。第2ピリオドは一進一退で2分間を終わり、ボールピックアップで負けてクリンチの防御となった山名は、こらえることができず1点を失った。

【1回戦1P】開始55秒に正面タックルで2点を先制した山名だが…。 【1回戦2P】0−0のあと、クリンチの防御となった山名。守り切れなかった。

 ※敗者復活戦へ回れず。


 【63kg級】西牧未央(中京女大)         優勝=25選手出場

1回戦   BYE

2回戦 ○[2−0(2-0,2-1)]Olesja Zamula(アゼルバイジャン)

 《試合経過》第1ピリオドの30秒すぎ、西牧が正面タックル。いったんは防がれたが、すぐに仕掛けて1点。1分4秒にも回り込んで1点を加え2−0とした。第2ピリオド、胴タックルのような形で場外へ押し出して1点。中盤、タックルを仕掛けたが投げをうたれて体勢が悪くなり、バックを取られて1−1。1分30秒に投げの打ち合い。最後は西牧がゴ―ビハインドの体勢にもっていって1点を獲得。2−1で勝った。

3回戦 ○[2−1(0-1,1-0,1-0)]Stefanie Stuber(ドイツ)

 《試合経過》第1ピリオドの50秒に西牧が回り込み、1点を先制。しかし、終了間際に体を振られてバランスを崩して1点を失い、1−1のラストポイントでこのピリオドを失った。第2ピリオドの中盤、がぶられながらもくぐりぬけてバックに回って1点。このポイントを守って1−0でこのピリオドを取った。

 第3ピリオド、西牧は相手の左腕を取って動きを制し、場外へ出して53秒に1点を先制。そのままのスコアで終了のホイッスル。

【2回戦1P】1−0のあとの1分4秒、西牧は回り込んで1点を追加。 【2回戦2P】1−1と追いつかれ、苦しい状況になったが、このあと1点を奪取。 【3回戦1P】1−0とリードした西牧だが、バランスを崩され、ラスト1秒で1失点。 【3回戦3P】1点をめぐる攻防となった第3ピリオド。中盤に取った1点を守った。

準決勝 ○[2−0(3−0,5−0)]Elena Shalygina(カザフスタン)

 《試合経過》第1ピリオドの21秒、西牧が相手を押し出して21秒で1点。58秒、相手のタックルを回り込み、送り出しのような形で1点を追加。終了間際にもテークダウンを取って1点を加えた。第2ピリオド、西牧が52秒に右脚への片足タックルで1点を先制。1分20秒にも仕掛けて一気にニアフォールへ持ち込み2点を追加。さらに相手のタックルを回り込みんで1点を加え、終了間際にも相手のがぶり返し失敗でバックを取って5−0とした。

【準決勝2P】1−0のあと、正面からタックル。一気にニアフォールへ(右写真) 【準決勝2P】フォールこそならなかったが、3−0として優位に立った。

決勝 ○[2−0(1-0,8-1)]Lubov Volosova(ロシア)

 《試合経過》第1ピリオドの50秒、西牧が相手の右脇をくぐるようなバックに回り1点を先制。ボロソワは終了間際に首投げを仕掛けたが、西牧がこらえ、1−0で終了。第2ピリオド、タックルを仕掛ける相手をうまい身のこなしでかわし場外へ出し、13秒で1点。投げを受けそうになったが、こらえて逆にバックを取り、左腕を取ってニアフォールの体勢に追い込み、1分17秒で5−0へ。このあと右脚を取っての片足タックルにいったが、逆にバックを取られ1失点。しかし、横崩しを仕掛ける相手を逆に抑え、上四方固めでフォールを狙い。6点差はついたが西牧は体勢を戻さず、8−1で試合終了。

【決勝1P】開始50秒、相手の右脇をくぐるようなタックルで1点を取った西牧。 【決勝2P】5−1のあと、ニアフォールへ追い込む。 【決勝2P】準決勝までは苦しい試合をあったが、決勝は快勝。 【決勝2P】栄監督、木名瀬コーチに肩車され、勝利のVサイン。

【決勝2P】応援席からの声援に最高の笑顔を見せた。 【表彰式】昨秋の東京に続いての笑顔。次の勝負は12月!

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