【特集】満面の笑みのV2は、打倒伊調馨のスタート…女子63kg級・西牧未央(中京女大)【2009年9月25日】

(文=保高幸子、撮影=矢吹建夫)



 日本の女子63kg級は、誰が闘っても世界最強であることが証明された日だった。2連覇を成し遂げた女王・西牧未央(中京女大)は終了と同時に大きくバンザイし、満面の笑みで喜びを表した(左写真)

 2回戦は動きが固く、3回戦ではステファニー・スタバー(ドイツ)相手に第1ピリオドを落としてしまう。足が動かない。「自分から攻めないと…。自分のレスリングができませんでした」。勝ちはしたものの、関係者は固唾(かたず)を飲む思いをしていた。組み合わせを見た時に、以前負けた選手との対戦の可能性があることが分かり、緊張もした。「見えない緊張感で最初は足が動きませんでした。昨年の東京大会とは雰囲気が違って…」

 しかし、準決勝で西牧の本来の動きが戻ってくる。相手はエレナ・シャリギナ(カザフスタン)。2008年1月に太原で行われた女子ワールドカップで1点も取れず負けた相手だ。「リベンジ戦だと分かっていたので、何としても勝とうと思いました」。そこで萎縮してしまわないのが西牧の強さだろう。「疲れているはずなのに、準決勝ではいい動きができて。しっかり勝てて良かったです」という。

 準決勝が終わった時点での表情は明るかった。苦戦したドイツ戦の後に自分のレスリングを取り戻せたことが自信につながったのだろう。勝って当然というような雰囲気があった。

■まだ伊調馨に勝っていないので、「チャンピオンとは思っていません」

 そして決勝。自分のペースで攻めて攻めて攻めまくる西牧。1失点があったものの、アクシデントのようなものだった。大量得点の上、フォール寸前まで追い込んだ。誰も文句のない圧倒的な試合で2連覇の歴史をつくった。「完ぺきな試合ではなかったけど、2ピリオドで勝てたので良かったです」と、思い描いていたレスリングに近かったと、はにかんだ。

 「この階級でやっていくと決めたので、内容はもちろん結果を残さなくてはいけないと思っていました。優勝しなければ、と」。最近は、しばらくは本来の階級ではないところを行き来していた西牧だが、ベストコンディションで臨める63kg級に去年から照準を絞った。それはもちろん、絶対王者の伊調馨(ALSOK綜合警備保障)との対戦を意味する。

 「去年の東京大会も、今回も、馨さんに勝っての代表ではないので、チャンピオンとは思っていません」と言った後、いよいよ今まで公式戦で勝ったことのない伊調馨への挑戦をあらわにした。「今回自信がついたので、12月の天皇杯(全日本選手権)で馨さんに勝てるようにがんばります。」さらにきっぱりとした口調で「私は攻める、という点では馨さんに負けません」と宣言した。

 世界チャンピオンになったばかりではあるが、真のチャンピオンと言われるためには、伊調馨を避けては通れない。全日本選手権でしっかり勝ち、本物のチャンピオンを目指す。それが西牧の選んだ道だ。


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