【特集】「笹本さんの勝っている相手なので善戦したかった」…男子グレコローマン60kg級・松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)【2009年9月27日】

(文=保高幸子、撮影=矢吹建夫)



 前回の2007年世界選手権で笹本睦(ALSOK綜合警備保障)が日本男子唯一のメダルを獲得したグレコローマン60kg級。今年の日本代表の松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)は、その笹本を倒しての出場。4回戦敗退という結果に終わったが、ニューフェースとしてはまずまずの試合内容で大会を終えた。

 笹本の後継者ということで背負う物は大きかったが、北京五輪のメダリストがずらりと並んだことで、今大会で最も厳しい階級だったかもしれない。松本は初戦、格下のタ・ナゴク・タン(ベトナム)に第1ピリオドを奪われる失態を犯してしまった。「緊張していました。でも、それでもう開き直れたというか、楽しんで、どんどんいった方がいいなと思って」と振り返る。第2ピリオドは開始早々から攻めて右差しから2得点。さらにスタンドからバックを取り横崩し等でテクニカルフォール勝ち。相手の負傷棄権で順調な勝利。

 欧州8位のアルタック・ハルチュニャン(アルメニア)との3回戦でも、第1ピリオドを落とすものの、第2・3ピリオドはスタンドでの攻めも効果的に働き、がぶり返しなどを繰り出して勝ち、「理想的な形でスタンドで点を取れてよかったです」と振り返る。

 悔しかったのは4回戦だ。笹本が勝っているヌルバット・テンギズバエフ(カザフスタン)に対しては、第1・2ピリオドともにスタンド戦で0-0。第1ピリオドのグラウンド戦は守り切れずに4失点、第2ピリオドの攻撃では攻め切れず相手の1点となってしまった(左写真=笹本のライバルに挑む松本)

 「自分の力不足です。スタンドもグランドももうひとつ足りない。笹本さんが勝っている相手なので善戦したかったけど、足りないところがあると気付きました」と松本。

 ばてていたわけではないが、攻撃するごとにカウンターで合わせられ、攻撃がポイントにつながらなかった。リフトにこだわってしまったことも原因のひとつだ。「悔しい終わり方でした」とポツリ。記者団の「よくやった」という声にも、首を横に振る。「笹本さんを倒して出たからには、上に行かないと」−。

 昨年の全日本選手権が不調だったため、他の選手と違い、今年は冬の海外遠征も春のアジア選手権も経験することなく世界選手権を迎えたことはハンディだった。「レベルが高い全日本のチームと一緒に遠征して、レベルの高い練習もしたいです」と、昨年の全日本選手権のつまずきが、ちょっぴり悔しそう。

 今回、差して前に出るというレスリングはできた。「脇差しと腕取りを連係して出せるようにしなければ」と課題を見いだした大会となった。2012年ロンドン五輪を目標に、笹本のように、いや、それ以上に世界で存在をアピールするような選手になっていけるか。


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