【特集】“飛龍高コンビ”で2階級制覇! 拓大が団体優勝へ大きく前進【2009年10月14日】

(文・撮影=増渕由気子)



 今季、学生界にとっての団体戦3大会目となる全日本大学グレコローマン選手権が10月13日、東京・駒沢体育館で開幕。74s級まで行われた初日は、拓大の60s級・佐々木遼と66s級・岡本佑士(右写真)が優勝し、2階級制覇で大学対抗得点を26点とし、2位・中大の19点を大きく上回ってトップに立った。

■岡本佑士、拓大愛をもって両スタイルで奮闘中!

 岡本は3年生ながら2年連続の優勝。そして今季は全日本学生選手権のタイトルに続いて二冠王となった。 昨年、全日本選抜選手権で2位となり、学生でも頂点を極めた岡本にとって、今季の学生大会で勝つのは「当たり前」。決勝戦ではがぶり返しをミスする一面もあったが、通してみればダントツの強さで優勝した(右下写真=第2ピリオド、自らの体も空中に浮いた豪快なバック投げがさく裂)

 専門はグレコローマンながら、拓大のためにフリースタイルでも活躍。5月の東日本学生リーグ戦では中量級のエースとして拓大の優勝に貢献した。11月の全日本大学選手権(大阪・堺市)も出場を決意し、拓大の団体戦三冠獲得に息を巻いている。

 両スタイルで闘う理由は、拓大の66s級に伝統があるからだ。「2つ上の藤本浩平(警視庁)先輩、1つ上の米満達弘(自衛隊)先輩がともに学生王者だった。66s級は絶対に取れる階級だった」。そのポジションを任される以上、岡本はフリースタイルの専門選手にも負けを譲りたくない。

 9月の全日本学生王座決定戦では、その伝統を守れなかった。早大との決勝戦、2年生で学生チャンピオンとなった石田智嗣との対決では、差しにいったところをうまく合わされ、タックルを取られてしまった。敗れた岡本はマットサイドで涙を流しながら悔しがった。チームも3−4で敗れ、岡本の1敗が響いた結果に。「勝てない相手ではなかった。(11月の全日本大学選手権では)リベンジします」。拓大の若きエースの岡本が両スタイルに渡っての三冠王に挑戦する。

■4年の佐々木遼がラストシーズンでついに王者へ

 岡本のダントツ優勝のカギは、もう一つあった。静岡・飛龍高時代からの1つ上の先輩・佐々木遼(右写真=西口茂樹部長から祝福される佐々木)が60s級で優勝したからだ。佐々木は「大学タイトルは初めて」と優勝した瞬間は、片手を天に突き上げて喜んだ。

 新人戦、JOCジュニアオリンピックカップなど、ことごとく日体大の横山巧に勝てず、タイトルを逃してきた。ついにグレコローマンの学生最後の今大会は、「優勝」へのこだわりが人一倍強かった。2週間前の新潟国体では3位に入賞。「調子が一番よかった。全力でぶつかることができた」と、飛躍の大会になった。

 その調子を維持して今大会も決勝に進出。決勝戦ではあっさりと第1ピリオドを奪うが、第2ピリオドでラストポイントによって落としてしまう。「メンタル面の弱さが出てしまった」と佐々木。主導権は常に佐々木にあっただけに、セコンドの西口茂樹部長からは「ストレートで勝てた試合だぞ」とのゲキが飛んだ。

 第3ピリオドは一転し、腕を取られて相手のペースで進む。何度となくゾーン際に追い込まれた。「いつもだったら諦めるというか、やられてしまう状態だった。けれど、西口先生の試合前の一言がとっさに出てきたんです。『(4年生で)最後なんだから思いっきりやってこい』。この言葉で粘れました」。第3ピリオドのグラウンド戦でディフェンスを選択した佐々木は、こん身の力を振り絞って相手の攻撃をしのぎ切り、勝利を手にした(左写真=決勝戦、バック投げを狙う佐々木)

 父・悟さんも拓大レスリング部のOBで、二代そろって拓大でファイトした。悟さんの選手時代の監督でもある宮澤正幸・拓大OB会最高顧問も「私の孫弟子が優勝しましたよ」と目じりを下げた。佐々木は、中学校までサッカーをメインにやっていたそうだが、高校から本格的にレスリングに取り組むことを決め、地元が東京にもかかわらず、静岡県の飛龍高にレスリング留学をして力をつけた。

 「ほとんどの試合に両親が応援に来ます。今大会も父親からアドバイスをもらいました」。ずっと応援し続けてくれた両親の前で決めてみせた悲願の優勝だった。「あとは重量級に頑張ってもらうだけ」と佐々木。最終日には96kg級に学生王者の藤本健治が控えている。拓大の二冠は決まったも同然か―。


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