【特集】日本留学最後の大会は決勝で対戦したい! 4年間奮闘した2人の留学生【2009年10月15日】

(文・撮影=増渕由気子)



 2006年の春、山梨学院大と国士舘大にそれぞれロシアとオーストラリアからの留学生がレスリング部の門を叩いた。ボリス・ムジコフとデニス・ロバーツ。ともに120kg級の選手だ。ボリスは昨年の学生四冠王であり、デニスはオーストラリア代表として北京五輪予選に出場した強豪だ。

 10月14日に行われた全日本大学グレコローマン選手権最終日にも大学の代表として出場し、ボリスは優勝、デニスは3位に入った(右写真=左がボリス)。日本で出場するレスリングの大会は、来月の全日本大学選手権のみ。これが学生最後の大会となる。

■ボリス・ムジコフが2年連続四冠王に王手!

 レスリングが最も強い国・ロシア。そこから山梨学院大へ留学生としてやってきたボリスだったが、最初から順風満帆ではなかった。レスリングはぎこちなく、日本人選手に負けることもしばしばあった。生活面においても、日本語が話せなかったため苦労した。

 だが、3年生になってロシアの血が覚醒。学生タイトルを総なめにし、今年も黒星なしの好成績(左写真=決勝で闘うボリス)。来月は史上初の2年連続学生四冠王を目指す。今回のグレコローマンの大会も危なげなく優勝。日本語も、チームメートたちの指導で不自由なく会話できるレベルに上達した。
 
 気になるのは卒業後の進路。ボリスは「レスリングは続けないかも」とポツリ。現在の全日本選手権に外国籍の選手のエントリーは認められていないため、来月の全日本大学選手権がラストマッチになる可能性が高い。「優勝できるように頑張ります」と笑顔で応えたボリスだが、日本で強くなった選手だけに、このままの引退は惜しいところだ。

 「日本が大好き」と話し、日本国籍の取得に関心がありそうとも思えるが、「それはない。(取得までに)10年かかる」と否定した。下田正二郎部長は、「ボリスの進路は現在考え中。自分を変えるために日本に来たのですから、何かしてあげれば」と話した。

■総合格闘技選手になるために来日したデニス・ロバーツ

 身長196cm。学生の中で突き抜けた存在なのは国士舘大のデニス。総合格闘技の選手になるために国士舘大学でその基礎となるレスリングに打ち込んでいる。ボリスと入学時期が同じになったのは、まったくの偶然。山梨学院大と国士舘大は離れているため、「会うのは試合の時だけ」と交友はあまり深められなかったようだが、ともに来日したての頃の共通の悩みは、「チームに外国人選手が一人ぼっちでさびしかった」。環境が似たもの同士のため、試合の時にしか会わない間柄でも、互いに刺激しあった。

 ボリスとデニスは「もう数えられないくらい試合している」と常にライバル。対戦成績はすべてボリスが勝利しており、「一度も勝ったことがないんだよ。コンバットレスリングでは勝ったけど」とデニスは苦笑する。でも、そんなライバルがいるから、また強くなろうと決意を新たにできる。デニスは今季でレスリングは卒業し、総合格闘技の世界に転身する準備をしているようだ。

 数多く対戦していても、まだ決勝の舞台でぶつかったことはない。「今日も準決勝で当たってしまった」とデニスは悔しそうに銅メダルに視線を落とした。学生ラストマッチとなる11月の全日本大学選手権では、留学生同士の決勝戦が見られるか−。


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