【特集】宿命のライバルを最後の対戦で撃破!…120kg級・荒木田進謙(専大)【2009年11月16日】

(文・撮影=樋口郁夫)



 全日本大学選手権の120kg級は、全日本チャンピオンであり、世界選手権代表でもある荒木田進謙(専大=右写真)が優勝。日本のナンバーワンながら、“国内最強”ではなかった汚名を返上し、学生の最後の大会を飾った。「やっとです! やーっとです!」と優勝後の第一声に実感がこもっていた。

 学生のこの階級を勝ち続けていたのは、ロシアからの留学生のボリス・ムジコフ(山梨学院大)。この大会で2年連続学生四冠王を目指していた。そのムジコフと、国士舘大にいるもう一人の留学生のデニス・ロバーツが初戦(2回戦)で激突。荒木田が初戦(2回戦)に勝つと、その勝者と準々決勝で闘うという組み合わせ。強豪同士の対戦を荒木田が待つ形になったのは、神様が荒木田にちょっぴり味方したのだろうか。

 しかし、3年前の全日本大学選手権で勝って以来、ムジコフに連敗を続けていた荒木田にとっては、「味方してくれた」などという気持ちにはなれないだろう。試合が始まると、「恐怖心で手がガクガクと震えてしまい、手が動かなかった」という。攻めなければならないのは分かっていたが、「返されたら終わりだ」という気持ちが出てしまい、踏み込むことができなかったそうだ。

 攻めることができなかれば、がっちり守ることが必要。批判の対象となることの多い“守り”だが、ケース・バイ・ケースであり、今回の荒木田の場合はディフェンスをしっかりやったことで、無駄なアクションがなくなるというプラスを生んだ。第1ピリオドを1−0で勝ち、第2ピリオドは0−0のあとのクリンチで勝利。とにかく勝利を引き寄せた。

 「地力? それとも、意地?」という問いに、「どちらでもない。うまく表現できないけど…。何とか最後くらい、という気持ちで」と、おそらく最後の対戦になるであろう試合での勝利の味をかみしめた。

■大きな壁を乗り越え、新たな壁も克服して真の全日本王者へ

 2008年に全日本王者となり、今年は世界選手権に出場したが、日本に自分より強い選手がいるということは気にかかっており、「彼に勝たなければ本当のチャンピオンではない」という気持ちがあった。

 この勝利で、本当の日本一になれた、という気持ちになったと思われたが、「国体で下中隆広(徳島=国士舘大大学院)に負けてしまいまして…。また課題ができてしまいました」と苦笑い。新たな課題を克服し、「自分から攻めて全試合快勝で優勝したい」と、来月の全日本選手権でこそ真の日本一を目指す(左写真=決勝はあっさりフォール勝ち)

 来年はアジア大会が行われる年(11月、中国・広州)。アジア大会といえば、重量級選手にとっては、派遣カットとの闘いが待つ可能性がある(注・4年前のドーハ大会は各スタイルとも重量2階級が派遣なし)。世界で結果を出さなければ、世界ジュニア選手権3位の荒木田といえども、どうなるか分からない。「(国際大会では)足にしがみついてでも金メダルを取ってきます」と気合を入れる。

 また、来年は重量級選手だけを集めた全日本合宿が数回予定されているなど、ナショナルチームは重量級の強化に対してこれまで以上に力を入れる方針を示している。「ありがたいです。期待にこたえたい」と話し、世界への飛躍を誓った。


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