【全日本選手権優勝選手】女子55kg級・吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)【2009年12月24日】

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)



 女子55s級は吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)のワンマンショーだった。2004年アテネ&2008年北京両五輪2連覇を達成し、五輪を含めて世界連覇。他の北京五輪代表選手の多くが引退・休養に入る中、吉田だけは休まず闘い続け、今年最後の全日本選手権では3試合ともにフォールを奪い完勝。2年連続3度目の天皇杯も獲得し、五輪翌年とは思えぬ完成度の高い内容を見せた。

 今年4月の全日本女子選手権ではポイントを失うなどミスを見せた吉田だったが、今大会は若手の息の根を止めるほどの圧倒的勝利だった。さぞかし、コンディションは万全かと思われたが、右手には痛々しいテーピングが巻かれており、「実は右手首を疲労骨折していた」と試合後に衝撃の事実を明かした。それでも、無失点&全試合フォール勝ちは吉田本人も納得の内容。右手首の負傷もあって、全試合1分以内の秒殺でしとめたことは、都合がよかったに違いない。

 北京五輪でともに戦った伊調千春&馨(ともにALSOK綜合警備保障)姉妹や浜口京子(ジャパンビバレッジ)の国内復帰戦ともあって、「うれしかった」と笑みを見せた。

 この夏は、「タックルばっかりに頼ってはいけない」とタックル禁止令を発して他の技に取り組んだ。新しいスタイルを手に入れて臨んだ世界選手権では優勝。「タックルばかり入っていると、ケガにつながるから…。もう、そんなに若くないですし」と苦笑したが、これは、2012年ロンドン五輪まで世界の頂点に立ち続けるための工夫をこらした練習を積んでいる表れだ。

 「少し早いけど、メリークリスマス!」と優勝インタビューで観客に応えた吉田。来年の目標は9月の世界選手権(ロシア)と五輪に次ぐ一大イベント、アジア大会(11月・中国)で優勝すること。2009年も飛躍の年で締めくくり、来年の備えは万全だ。


 吉田沙保里の話「実は12月に入る直前に右手首を疲労骨折してしまって、治療しながら練習していました。12月に入ったくらいの練習のスパーリングでボキッってやってしまったので、右手を着けない状態でした。今も着いたら痛いです。今日の試合は100%ではありませんが、3試合ともフォールできてよかったです。また、2年連続3度目の天皇杯もいただいて光栄に思っています。

 試合のスタイルに関しては、タックルばかり入っても腰を痛めたりケガにもつながりますし、研究されて返されることもありますから、相手の攻撃を受けてしのぐレスリングもやってみたかった。北京五輪で一緒に戦っていたメンバーが今大会で戻ってきてくれたのはうれしかったですね。来年は世界選手権もアジア選手権もあるので、優勝して締めくくりたいと思います」


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