67㎏級で日本最高記録にもかかわらず笑顔ゼロの表彰式…新海真美(アイシン・エイ・ダブリュ)

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 女子レスリング大国と名高い日本で唯一優勝者のいない、そして決勝進出を果たしたことのない階級―それが67kg級だ。その決勝のマットに世界選手権初出場の新海真美(アイシン・エイ・ダブリュ)がのぼった。結果はカナダのダグレニエに0-2(0-4、1-4)で負け銀メダルに終わったものの、日本の67kg級に新たな1ページを刻んだことには違いない。それでも若き挑戦者は表彰台の上で笑顔をみせることはなかった。

 決勝までの3試合、新海は一度も相手にピリオドをとらせることなく勝ち上がってきた。初戦のオーストリア戦では鮮やかにフォールを決め、続く試合の2ピリオド目では技を重ねて5点を獲得。初の世界選手権とは思えぬ落ち着いた動きで試合を運んだ。だが、決勝ではそれまでとは違う新海の姿があった。
 相手は8月に行われた北京五輪で、敵なしと言われた63kg級の金メダリスト・伊調馨を準決勝で苦しめたダグレニエ。新海自身も一度対戦したことがあり「変則的な構えをするやりにくい選手」と決勝前に警戒の色を示していた。いざ試合が始まると、予測していた通りに、腕をとり崩そうとするもなかなか技が決まらない。1分半ほど互いに激しい組み手争いをしていたが、勝機を見出したのはマーティンだった。新海は片足タックルからバックをとられるとそのままアンクルを2度決められ0-4。第1ピリオドをとられてしまう。

 「守っているつもりはなかったけどどこかで弱い気持ちがでていたのかもしれない」。試合後そう振り返った新海の気持ちを見透かすように、栄監督からインターバルのとき檄が飛んだ。その後、栄監督と体をがつんとぶつけ気合を注入し挑んだ第2ピリオド。今度は先に新海が仕掛けた。開始35秒に片足タックルをかけそのまま場外へとダグレニエを押し出し1点。ここから新海の攻撃が期待されたが、直後に両足タックルで倒されニアフォールをかけられると4点を計上した。  

 「全部むこうのほうが上だったから負けたんだと思います」。時折涙をにじませながら試合後、完敗を認めた新海。あと一歩のところで優勝を逃し、少しほろ苦い世界選手権となったが「これからもっと監督のもとで練習を積んでまたこういう大舞台に出てきたい」と力強く答えた。

(文・藤田絢子)



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