【特集】10代最後の国際大会を飾れず…男子フリー120kg級・荒木田進謙【2008年3月20日】








 10代最後の国際試合は切ない黒星で幕を下ろした。フリースタイル120s級の荒木田進謙(専大)は、初めて経験する国際舞台に気を高ぶらせていた。初戦の相手はモンゴル。第1ピリオド中盤に相手を振って押し出し先制点を上げるが、すぐにタックルで同点に戻される。接戦で第1ピリオドを落とすと、第2ピリオドは力の差を見せ付けられテクニカルフォール負けを喫した。

 その荒木田に勝ったモンゴルが2回戦で敗退してしまい、敗者復活戦の望みも消えた。午前の部が終わり、バスに引き上げる荒木田。いつものハイテンションは影をひそめ、バスの中でもぐったりとうなだれていた。「田中先輩だったら勝てた相手だった」と自分の実力を悔やんだ
(左写真=数少ないチャンスも生かせずに初戦黒星の荒木田)

 久木留毅コーチは「負けるパターンがいつも一緒」と指摘。厳しい一言に見えるが、心は思いやりに満ちていた。国内では田中章仁(FEG)の後塵を拝している状況だが、6分間、体力の消耗につながるフェイントからのタックルをかけ続けられるのは荒木田しかいない。動ける真の120s級としての価値は、アジア選手権初戦敗退でも変わることはない。ましてや荒木田は今大会がシニアの大陸選手権のデビュー戦。
 
 10代最後の試合、シニア大陸選手権デビュー戦、そして五輪出場権がかかった大事な大会と、あらゆる意味で節目の大会となってしまったが、荒木田に必要なことは「海外の経験を積むこと」(久木留コーチ)。

 さらに久木留コーチは宿題を出した。「国内だとタックルに入らずにバックポイントを取れる。でも海外じゃそうはいかないことが分かったと思う。いかに今回の経験を普段の練習に生かすかだね」

 アジア選手権代表の選手は五輪出場権の切符が最高のお土産だ。でも、荒木田が持ち帰る”経験”というお土産は、本人にとっては、五輪キップ以上に大切なものになるかもしれない。

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)



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