【特集】グラウンド技も多用し、中身も満足の優勝…女子63kg級・伊調馨【2008年3月21日】








 反省いっぱいの優勝だった姉・千春とは裏腹に、女子63kg級の伊調馨(ALSOK綜合警備保障)は「優勝より中身にこだわりたい大会だった。出てよかった」と振り返り、内容も満足いく優勝だった(右写真=表彰台での伊調馨)

 失ったポイントは準決勝のイェレナ・シャリギナ(カザフスタン)戦でクリンチから取られた1点だけ。アンクルホールドのほか、2分3ピリオドの現在のレスリングでは珍しくなってしまったトルコ刈り、またさきといったグラウンド技も試し、本番へ向けて多くの技を使い、効果を確認したといった感じだ。

 反省があるとすれば、準決勝の第2ピリオドを0−0で終わってしまったことだろう。守りでスタートとなったクリンチは、お尻をついてしまったものの背中はまったく返っていない状態で1点を入れられてしまい納得のいかない失点だったが、「クリンチになってしまってはダメ」ときっぱり。

 防御の強い選手相手には、まだポイントを取り切れない部分があるそうで、「ポイントを取りにいかなければ」と言う。特に、今大会は出てこなかったがライバルの一人である許海燕(中国)との対戦では「絶対にクリンチまでもちこまれてはならない」と言う。

 もともとグラウンド技の得意な選手だった。大会までの練習では、いわゆるワン・ツー攻撃(テークダウンで1点を取り、間髪おかずにグラウンド技で2点を取る)の練習に力を入れていたそうで、その成果がグラウンド技の多用という形で出たようだと分析する。

 グラウンド技よりテークダウンの技術の方が優先される現在のルールだが、持っていないより持っていた方が有利なことは言うまでもない。北京のマットでも華麗なるグラウンド技が披露されることだろう
(左写真=決勝でまたさきを狙う伊調)

 今後の課題はタックルの入り方。1月の女子ワールドカップ(中国・太原)で吉田沙保里選手がやられたよう、返し技重視の傾向があるため、その対策が急務だ。幸い、国内の練習でも後輩の受け方が変わっており、日々の練習の中で強化できる状況。タックル返し対策も北京オリンピックまでさらに強固なものになっていきそう。

 最高の形での前哨戦を終え、いよいよ北京五輪へ向かう。オリンピック連続金メダル獲得に死角なしか。

(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)



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