松本慎吾(一宮運輸)が優勝で五輪出場権獲得…アジア選手権第4日【2008年3月22日】








 アジア選手権第4日は3月22日、韓国・済州島のハルラ体育館で男子グレコローマン4階級(55・66・84・120kg級)が行われ、84kg級の松本慎吾(一宮運輸)がこの大会初の優勝を決め、北京五輪出場権を獲得した。

 松本は初戦でカザフスタン、2回戦で台湾をそれぞれ破り、準決勝で昨年3位のヤナルベク・ケンジエフ(キルギスタン)を破って決勝進出
(左写真)。反対側のブロックからは出場権を持っているイランが出てきため、この時点で出場権のない選手の中での最上位が決定し、五輪出場権を獲得した。決勝では、イランの今年のワールドカップ代表のネマトプール・テレブを2−1で下し、北京行きキップ獲得に花を添えた。

 他の3選手はいずれも3位決定戦に勝って銅メダルを獲得したものの、どの階級も五輪出場権のない国が決勝へ進んだため、出場権獲得はならなかった

 55kg級の長谷川恒平(福一漁業)は初戦で勝ったあと、準決勝で世界V3のハミド・スーリヤン(イラン)に敗れて3位決定戦へ回り、リ・シュジン(黎淑金=中国)を破った。66kg級の飯室雅規(自衛隊)は初戦で世界8位のヤルカン・バヤフメトフ(カザフスタン)を破り、準決勝で2006年アジア大会1位の金a哲(キム・ミンチュル=韓国)に敗れて3位決定戦へ。そこで台湾選手をフォールで破って銅メダルを決めた。

 120kg級の新庄寛和(自衛隊)は初戦でキルギスタン選手を破ったものの、準決勝で2004年アテネ五輪2位のゲオルギ・ツルツミヤ(カザフスタン)に完敗。3位決定戦では地元のホン・ヒュヒー(韓国)を破った。

 各階級の成績は下記の通り。


 ◎男子グレコローマン

 【55kg級】長谷川恒平(福一漁業)    3位=11選手出場

1回戦  BYE

2回戦 ○[2−0(3-0,4-0)]Rajinder Singh(インド)

 《試合経過》【1P】スタンドは0−0。グラウンドの攻撃となった長谷川はガッツレンチで2点。防御を守り切って3−0へ。【2P】32秒に長谷川が胴タックルで1点。グラウンドの攻撃でガッツレンチを決めて3−0。防御を守って4−0へ。

準決勝 ●[0−2(1-7,TF0-5=1:12)]Soryan Reihanpour Hamid(イラン)

 《試合経過》【1P】長谷川はがぶられ、がぶり返しで3失点。胴タックルで1点を返した。グラウンドの防御では俵返しをこらえて1失点に抑える。攻撃ではがぶり返しを失敗して押さえられ2失点。【2P】スタンドは0−0。グラウンドの防御となった長谷川は5点となる俵返しを受けてしまい、テクニカルフォール負け。

【1回戦2P】長谷川(青)が胴タックルからテークダウン。 【1回戦2P】グラウンドの攻撃でガッツレンチを決めた。 【準決勝2P】グラウンドでがぶり返しを狙う長谷川(赤9. 【準決勝2P】しかし失敗。逆に押さえ込まれてしまった。

3位決定戦 ○[2−0(2-0,3B-3)]Li Shujin(黎淑金=中国)

 《試合経過》【1P】スタンドは0−0。先にグラウンドの防御となった長谷川は30秒を守り切り1点。攻撃でガッツレンチを決めて3−0。【2P】投げ技を仕掛けた長谷川だが、失敗して1失点。グラウンドの防御では、うまく体を入れ替えて1点を取り、後方に投げて2点。ここでなぜか相手に1点が入り3−2へ。グラウンドの攻撃でポイントを取れずスコアは3−3となったが、ビッグポイントの差によって長谷川が勝った。

【三決戦1P】銅メダルを目指し、中国選手と相対した長谷川(青)。 【三決戦2P】相手のリフトからの攻撃を耐えてバックを取った。 【表彰式】五輪出場権は手にできなかったが、アジア・トップ級を証明。 【表彰式後】銅メダル獲得にも、笑顔の全くなかった長谷川。

 【66kg級】飯室雅規(自衛隊)     3位=11選手出場

1回戦  BYE

2回戦 ○[2−1(2-4,1L-1,TF6-0=1:30)]Bayakhmetov Darkhan(カザフスタン) 

 《試合経過》【1P】スタンドは0−0。先にグラウンドで攻めた飯室は俵返しを反対に返して2点。しかし立ち上がられ、そり投げを受けて1失点。防御ではフライングの警告で2失点。ガッツレンチで回され2−4。【2P】スタンドは0−0。グラウンドはお互いにポイントを取れず、最後に守った飯室の勝ち。【3P】飯室が30秒に胴タックルで倒し、ガッツレンチで3−0。グラウンドの攻撃でガッツレンチを決めて2点。防御では相手のフライングで1点をもらい、6−0のテクニカルフォール。

準決勝 ●[0−2(2-3,3-4)]Kim Min-Chul(韓国)

 《試合経過》【1P】スタンドは0−0。グラウンドの防御となった飯室はがぶり返しを受けながらも押さえて両者2点。攻撃に回った飯室だが、ポイントを取れず2−3。【2P】スタンドは0−0。飯室がグラウンドの防御を守って1点。攻撃では相手をニアフォールに追い込みながら、もつれてガッツレンチを決められ、ビデオチェックの結果、スコアは3−4へ。このままのスコアで終わった。

【1回戦1P】昨年世界8の選手と相対した飯室(赤)。 【1回戦3P】ガッツレンチを決め、スコアは5−0へ。 【準決勝2P】グラウンドの攻撃で必死に投げようとする飯室(赤)。 【準決勝2P】もつれてしまってガッツレンチを受けた。

3位決定戦 ○[フォール、2P0:52(TF6-0=1:19,4-0)] Chao Yin Lung(台湾)

 《試合経過》【1P】スタンド戦の終了間際に飯室がテークダウンで1−0。グラウンドの攻撃で飯室が俵返しを決め、さらに転がして6−0へ。【2P】相手の投げ技の失敗を使って飯室が1点。そのあと、すぐに一本背負いを決め、そのままフォール勝ちした。

【三決戦1P】飯室(青)が俵返しを決める。5点でもおかしくない。 【三決戦1P】俵返しに続いてグラウンドで転がし6−0。 【三決戦2P】一本背負いからフォールを決めた。 【表彰式後】出場したアジアの大会3連続でメダルだが、笑顔はなし。

 【84kg級】松本慎吾(一宮運輸)     優勝=10選手出場

1回戦 ○[2−0(3-0,3-2)]A. Samokhin(カザフスタン)

 《試合経過》【1P】スタンドは0−0。グラウンドの攻撃となった松本は相手の肩を極めて体を返して2点。防御を守り切って3−0。【2P】スタンドは0−0。グラウンドの攻撃となった松本は俵返し。完全ではなかったが3点。防御では俵返しに脚を使って防御してしまい、2点を失って警告1。しかし残り時間を守り切って3−2で勝った。

2回戦 ○[2−0(1L-1,TF6-0=1:39)]Lin Ming Hsuan(台湾)

 《試合経過》【1P】スタンドは0−0。グラウンドの攻防はお互いにポイントがなく、最後に守った松本の勝ち。【2P】松本が胴タックルから場外へ出して1点。グラウンドの攻撃で俵返しで4−0へ。守っては体を入れ替えて相手をニアフォールに追い込み、6−0とした。

【1回戦1P】グラウンドの攻撃で2点を挙げた松本(青) 【1回戦2P】やや体勢は崩れたが、3点を取って優勢へ。 【2回戦1P】格下の台湾が相手だが、松本(赤)は慎重に攻めた。 【2回戦2P】低い軌道だったが、俵返しで3点をゲット。

準決勝 ○[2−0(2-1,3-0)]Janarbek Kenjeev(キルギス)

 《試合経過》【1P】スタンドは0−0。グラウンドの防御となった松本は相手の俵返しをうまく体を入れ替えで1点。攻撃ではポイントはなかったが、2−1。【2P】スタンドは0−0。グラウンドの攻撃権を得た松本は低い軌道ながら俵返しで2点。最後の30秒を守り切って3−0。

【準決勝1P】グラウンドの防御だったが、体を入れ替えて1点の松本(青)。 【準決勝2P】グラウンドの攻撃で勝負の俵返し。 【準決勝2P】やや低かったが、貴重な2点を獲得。 【準決勝2P】決勝進出。この瞬間、松本の北京行きが決まった。

決勝 ○[2−1(2-0,TF0-6=1:39,2-1)] Nematpour Taleb (イラン)

 《試合経過》【1P】スタンドは0−0。グラウンドは松本の攻撃権で始まり、相手が場外へ出て場外逃避の警告で1点。防御はしっかり守って2−0。【2P】スタンドは0−0。松本のグラウンド攻撃は不発で0−1。防御では豪快な俵返しを決められ、0−6のテクニカルフォール負け。【3P】スタンドの攻防で松本が押し出されてしまい0−1。グラウンドの防御は守り切って1−1。攻撃に転ずると。俵返しを仕掛け、体勢は崩れたが1点をゲット。2−1のスコアで終了のホイッスルを聞いた。

【決勝2P】第1Pを取り、第2ピリオドも攻めた松本(青)だが…。 【三決戦2P】防御で不覚にも5点の俵返しを受けてしまった。 【三決戦3P】1−1で迎えたグラウンドの攻撃。0点に終われば負ける状況で、必殺の俵返しが爆発。1点だったが、勝利を引き寄せた。

【三決戦3P】準決勝に続いてガッツポーズで声援に応える。 【表彰式】アジア大会の優勝はあるが、アジア選手権の優勝は初。 【表彰式】五輪出場権獲得済みのイランと韓国の国旗を従えて。 【表彰式】準決勝後は涙だったが、決勝のあとは満面の笑み。

 【120kg級】新庄寛和(自衛隊)     3位=8選手出場

1回戦 ○[2−1(@L-1,0-2,2-1)]Nurbek Ibragimov(キルギスタン)

 《試合経過》【1P】スタンドは0−0。グラウンドはともにポイントを取れず、最後に守った新庄の勝ち。【2P】スタンドは0−0。グラウンドの防御となった新庄はガッツレンチを決められ0−1。攻撃ではポイントを取れずに0−2へ。【3P】スタンドで積極的に攻めた新庄は相手に警告を与えて1ー0。グラウンドの攻防はお互いにポイントが取れずに、2−1で勝った。

準決勝 ●[0−2(TF0-7=1:26,TF0-7=1:22)]SALDADZE David(カザフスタン)

 《試合経過》【1P】28秒にバックを取られた新庄はガッツレンチで回されて0−3。グラウンドでも2度回されて0−7。【2P】32秒にバックを取られた新庄はガッツレンチでさらに2失点。グラウンドでも2度回され、0−7。

【1回戦2P】第1Pを取った新庄(赤)。第2Pも攻めるが…。 【1回戦3P】グラウンドの攻撃は0点。防御で守り切って勝利。 【準決勝1P】テークダウンを奪われた新庄(青)がすぐに回された。 【準決勝2P】強烈なガッツレンチの前になすすべがなかった。

3位決定戦 ○[2−0(@L-1,2-1)] Hong Hyun Hee(韓国)

 《試合経過》【1P】スタンドは0−0。グラウンドの攻防はお互いにポイントがなく、最後に守った新庄の勝ち。【2P】開始早々、相手が頭突き。国際レスリング連盟の審判委員長が入ってきて反則(警告)を取る。その後、グラウンドの攻防はともにポイントがなく、2−1で新庄が勝った。

【三決戦1P】メダルを目指し、地元選手と闘う新庄(青)。 【三決戦2P】勝った瞬間、ガッツポーズで応援席に応えた。 【表彰式】国際大会初白星のみならず、表彰台に立った。 【表彰式後】五輪出場権は取れなかったがは、手ごたえ十分。


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