【JB杯優勝選手特集】48kg級・坂本真喜子(自衛隊)【2008年4月7日】








 北京オリンピック出場を決めている伊調千春(ALSOK綜合警備保障)がけがのため欠場した48kg級は、伊調と2004年アテネ五輪と北京五輪の出場を争った坂本真喜子(自衛隊)が3年ぶり4度目の優勝を決めた。

 決勝の相手は京都・網野高時代からアジア・カデット選手権を含め数々のタイトルを獲得して注目を集め、将来を期待される三村冬子(日大)。第1ピリオドは粘り強い三村のディフェンスにあい、得意のタックルが不発。0−0で2分間が終わり、ボールピックアップの末、攻撃権が相手に渡ってこのピリオドを失った。

 坂本は動きにいつもの切れがない。試合の流れは勢いのあるティーンエイジャーに傾くかと思われたが、やはりいくつもの修羅場を経験してきたトップ選手と大学に入学したばかりのホープでは底力が違った。坂本は第2、3ピリオドとスタミナの落ちてきた三村を攻め立てて連取。オリンピアン不在の中、第一人者としての立場をしっかり守った22歳は「若い選手にてこずりました」と苦笑いを浮かべた。

 昨年の世界選手権でライバルの伊調が金メダルを獲得し、アテネ五輪に続いてオリンピック出場の夢が消えた。さらに10月に東京で開催される世界選手権の代表も伊調に決定済み。現在の坂本は当面の目標を立てずらい立場にあり、モチベーションの低下も無理からぬ話だ。姉の日登美は「真喜子は浮き沈みが激しくて、辞めたいと言うこともあった。ロンドン五輪を目指そうとなかなか本気にはなれなかった」と証言する。

 このような状況で坂本は今大会をひとつの契機にしようと考えた。「今、自分にできることは目の前の大会に出場して若い選手と試合すること。きっとプラスになる」。揺れる心でトレーニングに励み、追撃する若手を振り切っての優勝した坂本は「今日の優勝が新たなスタート」と満面の笑み。やはりレスラーはマットの上に立たないと始まらないということなのだろう。

 「これからはいろいろな人にアドバイスをもらって課題を克服したい。冷静に考える時間もある」。ロンドンまでの道のりは長い。坂本は「焦ることはない」と自分に言い聞かせているようだった。

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫



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