【JB杯優勝選手特集】63kg級・伊調馨(ALSOK綜合警備保障)【2008年4月7日】








 約2週間前のアジア選手権(韓国)で優勝した直後、スタンド、グラウンドともにベストの試合をした63kg級の伊調馨(ALSOK綜合警備保障)は満面の笑みを浮かべた。“がい旋試合”となった今大会も1回戦(準決勝)、決勝ともに第1ピリオドでフォール勝ちで力の差を見せつけ、ジャパンビバレッジ杯8連覇を達成(この階級7連覇)。最優秀選手賞にも輝いた。しかし、馨にアジア選手権で見せた会心の笑みは見られなかった。

 北京五輪前の最後の公式戦。五輪の金メダルに向けて順調な仕上がりを見せたと思われたが、「今日の点数は50点くらい。もうちょっと思った試合ができればよかった」と反省のコメントを並べた。アテネ五輪金メダリスト&世界V6の馨は、現在、一番安定感のある日本女子代表選手と高評価を受けている。2試合のトータル2分弱で優勝し、これ以上ない試合内容でどこが不満だったのだろうか。
  
 「相手にタックルを入られてしまった。そこからバックに回ってフォールして勝った。一度もタックルに入れなかった。待ってしまったのかなと思います」。女王として受けの姿勢になってしまったことが自己採点50点につながったようだ。

 アジア選手権で見せた安堵の表情を垣間見せることなく、馨は「世界の63s級では体も小さいほうだし、パワーもない」と五輪に向けての課題を次々と挙げた。ファイトスタイルも、ルールをうまく使って、1点勝負で着実に勝つことを心がけているようだ。それでも、「思った通りの練習ができれば五輪で金メダルを取る自信があります」と五輪連覇への意欲は人一倍ある。今の自分におごることなく、少しでも悪い部分を見つけたらたとえ優勝できても、反省して次へ生かす。

「今、一番怖いのは“けが”です」。自分に厳しい馨の最大の敵は、もはや“けが”しか見当たらない。

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)



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