【JB杯優勝選手特集】55kg級・吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)【2008年4月7日】








 今年1月のワールドカップ(中国)における“まさかの連勝ストップ”は、55kg級の吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)をさらにたくましくさせたようだ。あの時に流した涙はもう枯れてどこかへ行ってしまった。そう思えるほどに、今回の大会は吉田にとって復調をアピールする絶好の機会となった。

 3月のアジア選手権(韓国)でも、世界の女王の強さは見せつけたのだが、今回の大会は東京での開催。吉田は心配していた日本のレスリング・ファンを安心させるかのごとく、磐石な強さを見せつけた。初戦となる2回戦から登場し、まずは吉田理乃(中京女大)のタックルをがっちりと受け止めると、ねじ伏せるようにして12秒でフォール勝ち。

 続く準決勝の渡部悠香(日体大)戦ではきっちりタックルを切ってバックに回ってポイントを奪うと、一気にフォールを奪った。決勝の松川知華子(ジャパンビバレッジ)戦では、手四つの差し合いの攻防からバックに回ってポイントを奪う、と続けざまにニアフォールの体勢にもっていきポイントを重ねていく。松川がブリッジで粘るものの、吉田がフォールにもっていくのに時間はかからなかった。

 全試合フォール勝ちという結果に、応援にやってきたファンも喜ぶ。吉田は「フォールは気持ちいい」と笑顔で応える。3試合に要した時間は3分かかっていない。スピード重視の練習をした成果も出たようだ。そして「ワールドカップで連勝が止まってしまいましたが、自分の足りない部分を補えたことでこういう結果に終われたと思っています。北京まで残り4か月、集中して練習していかないとダメですよね。フォールが決めきれない場面もあったので、きっちりと練習して、アテネに続いて8月の北京でも金メダルを獲ってきます」と力強く語った。

 連勝は確かに止まった。だが、吉田の進化は止まらない! もちろん、北京でも世界選手権でも、その進化を見せてくれるはずだ。

(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫)



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