【特集】初戦黒星の不覚を乗り越えて7年ぶりの美酒…山梨学院大【2008年5月12日】






 山梨学院大の応援団がカウントダウンを大合唱した。大声援を受ける74kg級の主将、奈良部嘉明が勝利を手にした瞬間、山梨学院大の選手が一斉にキャプテンの元へ駆け寄った。2連覇中の王者・日体大を55kg級から一気に4連勝で下すという試合内容に、チームを率いる高田裕司監督も満面の笑みを浮かべて大きくうなずいた(左写真=74kg級の奈良部が勝って優勝を決めた山梨学院大)

■黒星スタートだったが、かえって気持ちが引き締まった

 昨年の東日本学生リーグ戦は、優勝した日体大に勝利しながら早大に痛い黒星を喫し、決勝に進めないという悔しさを味わった。メンバーの多くが残った今季、選手たちの頭には優勝の2文字しかなかった。

 そんな気持ちとは裏腹に、待っていたのは誰もが予想しなかった最悪のスタートだった。高田監督の「いろいろな選手を試したかったし、出場させたい4年生もいた」という方針で、主力選手を温存する形で試合に臨んだところ、格下の群馬大によもやの敗戦。手痛いつまずきに、チームの状態はこれ以上ないほど落ち込んだという。

 「でも、あれでみんなの気持ちが引き締まった」と振り返るのはキャプテンの奈良部だ。以後の試合はメンバーを落とさず、ベストメンバーでリーグ戦を闘った。病み上がりのポイントゲッター、60kg級の大沢茂樹が国士大戦で星を落とすアクシデントもあったが、基本的には圧勝を繰り返してチーム状態は徐々に回復。グループ戦の1位を確保し、リーグ戦前から標的にしていた日体大との決勝戦までたどり着いた。

■55kg級・小俣将太気迫あふれる勝利で流れをつかむ

 勝負の大一番、チームに勢いを与えたのは切り込み隊長、55kg級の小俣将太だ。「ここを取れるかどうかが勝負の分かれ目。取られれば流れは日体大に行った」(高田監督)という大事な試合は、予想通りの第3ピリオドまでもつれる大接戦。これを小俣が気迫あふれるレスリングでもぎ取ると、60kg級の大沢、66kg級の森川一樹も白星を挙げて3−0とリードを広げた
(右写真=55kg級に続いて勝ち流れを完全に引き寄せた大沢茂樹)

 3人に作ってもらった流れに乗った74kg級の奈良部は「昨年は4回くらい対戦して一度も勝っていない」という苦手の山名隆貴をアグレッシブに攻め立てて念願のリベンジに成功。84kg級と96kg級は星を落としたものの、最後は120kg級のボリス・ムジコフがきっちり締め、前年度王者を突き放した。

 学生から「ユウジコール」を浴びて胴上げしてもらった高田監督は「山学大は全日本大学グレコローマン選手権のタイトルがまだない。今年はこれを取りたい」と次なるターゲットを提示。最優秀選手賞に選ばれた奈良部主将は「いま4年生が16人いて、10人グレコに取り組んでいるんです。グレコ選手権はもちろん、今年は団体の4冠を目指してがんばります」とグランドスラム達成を力強く宣言した。

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)



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