「北京への闘いは終わりではない。メダル獲得に全力を尽くす」…富山英明強化委員長【2008年5月26日】






 男子グレコローマンの“ノビサド決戦”が終わり、男子の北京オリンピック出場が、フリースタイル3階級、グレコローマン3階級の計6階級に決まった。五輪の予選制は1992年バルセロナ五輪から導入されたが、それ以来で最少の出場階級。2012年のロンドン五輪へ向け、抜本的な強化が迫られることになった。

大    会 出 場 階 級 出場率
1992年バルセロナ五輪 20階級中16選手(フリー9階級、グレコ7階級) 80%
1996年アトランタ五輪 20階級中12階級(フリー6階級、グレコ6階級) 60%
2000年シドニー五輪 16階級中8階級(フリー4階級、グレコ4階級) 50%
2004年ア テ ネ 五 輪 14階級中9階級(フリー5階級、グレコ4階級) 64%
2008年 北 京 五 輪 14階級中6階級(フリー3階級、グレコ3階級) 43%

 この週末、新潟・十日町市での女子の全日本合宿を視察していた日本協会の富山英明強化委員長(日大教)は「(予選最終ステージで)グレコローマンで1階級は取ってほしかったが…」と残念そう。「(アテネ五輪の)9階級が6階級に減ったのには、何か原因があるはずだ」としなら、すぐにはその答えが出てきそうにもない。

 しかし「この4年間、コーチはしっかりまとまっていた」と、全日本チームの強化にかけてきたコーチ陣をかばい、「北京への闘いが終わったわけではない。出場する階級でメダルを取れるよう、最後の追い込みをかけたい」と続けた。出場階級は減っても、最低でもアテネ五輪と同じメダル2個を目指し、全力を尽くす姿勢を見せた。

 高田裕司専務理事(山梨学院大教)は「アテネ五輪のあと、合宿や遠征をしっかりやってきた。それでこの結果。何かが足りなかった。やはり厳しさか?」と言う。全日本チームにベテランと呼ばれる選手が多く、「コーチはどうしても気を遣う。それでは勝てない。本当に厳しくできるのは20代前半まで。ロシアがいい例だ」と話し、若手選手の激しい突き上げ、全日本チーム入りを今後の4年間で期待する。

 さらに、「まず1人、世界のトップ選手の育成が必要」という。昨年、グレコローマン60kg級の笹本睦(ALSOK綜合警備保障)が世界2位になったが、最後の半年間ではなく、4年間チームを引っ張り若手の目標となる世界トップ選手の存在がないと、チーム全体の底上げは厳しいと言う。

 富山強化委員長、フリースタイルの和田貴広コーチ(前日本協会専任コーチ=4月から国士大コーチへ)、グレコローマンの伊藤広道コーチ(自衛隊)らはシドニー五輪後から全日本チームの強化に当たってきた。「仕事や家庭を持っている身。全日本を8年間、任せたのは酷だったかもしれない。4年間と区切り、責任を持たせて集中させた方がいいかも」と話し、北京五輪のあとは“4年勝負”で臨ませたい方針を示した。



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