【特集】真価の問われる大会を制し、新時代の幕を開ける…グレコ55kg級・長谷川恒平【2008年6月26日】






 12月の天皇杯全日本選手権を制したグレコローマン55s級の長谷川恒平(福一漁業)が、明治乳業杯全日本選抜選手権でも実力を発揮。大会初優勝を飾った(左写真)

 セルビアで行われた五輪最終予選で敗れ一線を退いた前王者の豊田雅俊(警視庁)不在の中で行われた同階級だったが、元全日本王者の平井進悟(ALSOK綜合警備保障)や、元世界選手権代表の村田知也(三重・久居高教)など実力のあるベテランが顔をそろえる。「前回は勢いで制した」(本人談)と長谷川にとって、今大会は真価が問われる大会となった。

 初戦を危なげなく突破し、2回戦では日体大で汗を流す“同門”の平尾清晴(新潟県協会)相手に、グラウンドで失点はしたものの、鮮やかに胴タックルを決めてレベルの違いを見せ付けた。決勝戦の相手は、全日本選手権で長谷川に敗れ、久々にノーシードから決勝に上がってきた平井だ。当然、長谷川へのリベンジに燃えていた。

 平井と言えば、必殺のローリングを持っているが、長谷川はそれを耐えるだけでなく、自分の攻撃ではローリングを次々と決めて2−1で初優勝。これで国内のビッグタイトルを連覇した。長年苦しんできた平井相手に2連勝して決めた優勝は、豊田がいなくても勝ち応えがあったことだろう。「12月の全日本選手権から5月の五輪最終予選まで全日本代表としてやってきて、意識が高くなった」と、長谷川はすでに世界目線でレスリングを見ている。

 それでも、長谷川におごりはない。「平井さんは技が増えていました。第2ピリオドでのリフト技は、これまでかけられたことがないです」
(右写真=平井のリフト技でポイントを失った長谷川)。大ベテランの進化に、優勝してホッとするのはほんの一瞬。4年後のロンドン五輪を目指して、明日からはまた練習漬けの毎日だ。

 6月28日には青山学院大出身初の全日本チャンピオンを祝って、長谷川の祝勝会が盛大に行われる。選抜選手権を制したことで、きっと、うまい酒が飲めることだろう。長らく続いた豊田政権が幕を下ろしたグレコローマン55s級。ロンドン五輪に向けて、いよいよ長谷川の時代が到来する!

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)


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