【特集】有終の学生二冠王にも笑顔なし…66kg級・米満達弘(拓大)【2008年11月16日】



 8月の全日本学生選手権(インカレ)でダントツの強さを見せて優勝し、大会MVPにも輝いた66kg級の米満達弘(拓大)。今回も大勝して12月の天皇杯全日本選手権へ弾みをつけるはずだった。だが、「優勝しても内容が悪ければ意味がないです」と、学生二冠王者に輝いたにもかかわらず、さわやかな笑顔はなかった。

 理由は自信がなかったことだ。「試合になると負けるときの記憶がよみがえってしまう。返されたらどうしよかなとか…」。拓大の3連覇がかかる今大会を主将として臨んだ米満には予想以上のプレッシャーがかかり、それが自信喪失につながっていた。「学生最後の大会で、勝たないといけなかったので…」。勝負に徹した結果、得意の伸びのあるしなやかなタックルはいつもより切れがなく、慎重になってしまって相手と見合うシーンが多く見られた。

■タックルのないレスリングでは、「ロンドンに行けない!」

 米満の調子の悪さに決勝戦で、西口茂樹部長がついに切れた。山梨学院大の森川一樹を攻めあぐねた瞬間、「そんなんじゃ、オリンピックなんか行けないよ!」とセカンドセコンドから声を飛ばした。米満は「(コーチの声は)はっきり聞こえました。もっと鍛えないとロンドンに行けないと思う」と唇をかんだ。

 内容は最悪だったが、チームは4階級中3階級で決勝に進出し、日体大を0・5ポイント差で追う2位につけている。米満は大会3連覇に向けて、「自分の仕事は果たした」とホッと胸をなでおろした。

 次の大会は12月の全日本選手権。66s級は北京五輪を目指した選手の多くが現役続行を宣言している。そのライバルの中で一度も勝ったことがないのが、アジア大会銀メダリストの小島豪臣だ。6月の全日本選抜選手権でもストレートで敗れて2位に終わっている。

 小島は米満の生命線であるタックルをうまく切る技術に長けている。「タックルなら、高谷惣亮が入学してきて、いい練習になっています。タックルのレベルも向上できました」とスキルアップを強調。12月にこそ、パワーアップした米満のタックルを全日本のマットで披露できるか。

(文・撮影=増渕由気子)


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