【特集】今季無冠の危機転じて圧倒的な強さ見せた日体大が、5年ぶりの優勝【2008年11月17日】



 学生の団体4大タイトルのうち、東日本学生リーグ戦、全日本大学王座決定戦、全日本学生グレコローマン選手権のすべてで悔しい2位に終わっていた日体大が、最終タイトルで栄冠に輝いた。全日本大学選手権で5年ぶり19度目の優勝を果たした。

 東日本学生リーグ戦の2位とシーズン後半戦2戦の2位の意味は違う。8月の全日本学生選手権(インカレ)で両スタイルで8階級を制した日体大は、秋から始まるシーズン後半戦に絶対的な自信を持っていた。しかし、主将・門間順輝があばら骨の負傷で戦線離脱。門間不在が響いてタイトルを1つも取れないまま、最終戦に突入してしまった。
 
 もしタイトルに手が届かなければ、3年ぶりに無冠の屈辱を味わうことになる。その危機感がチームをひとつにし、さらに門間も8月の時点では寝起きするのも一人で無理だった状態からスパーリングができるまでに回復。なんとか最終戦に間に合った。

■門間主将の復帰で、インカレでの強さが戻ってきた

 55s級、60s級、84s級、96s級−。この4階級は8月のインカレで日体大が優勝した階級だ。大学選手権も同4階級を制した日体大が、今季初タイトルに輝いた。「インカレの時のように、いつもどおりやれば勝てる」(安達巧監督)との言葉どおり、55s級では守田泰弘が3年生ながら学生二冠王に成長。60s級の前田翔吾は2回戦で脳しんとうを起こしながら、決勝戦まで勝ち抜き大学初タイトルを手にした。優勝した瞬間には思わず号泣するほど。

 84s級の松本篤史は、門間が不在の中、日体大の重量級のエースとしてフル回転。昨年までは4分間マットを走り回るようなレスリングだったが、組み手も覚え始めて荒削りなレスリングから卒業。決勝戦では早大のルーキー山口剛に完勝し(左写真)、守田と同じ3年生で大学二冠に輝いた。96s級の門間は2ヶ月間、自分のけがでチームに迷惑をかけてしまったお詫びと言わんばかりの完ぺきな試合運びを見せ、無失点で学生ラストシーズンを優勝で飾った。

 他に、66s級の志土地翔太は3位に食い込み、74s級の山名隆貴は5位へ。120s級はインカレ96s級優勝の下屋敷圭貴がエントリー。「本当は学生最後の試合だったし、96s級で勝負してみたかった。96s級ならすんなり優勝できると思った」という本音もあったが、「チームで優勝したかった」ため、120s級に挑戦。飲み食いして計量をパスし、試合では30kg以上もある選手を相手に奮闘。アジア・ジュニア選手権2位の相沢優人(日大)には負けたが、3位決定戦でしっかり勝って、優勝に貢献した。

■松本慎吾コーチの加入で、来年はもっと強くなる!

 優勝4階級に加え、全階級で入賞して大学対抗得点のポイントで0点がなかった日体大。3連覇を狙った拓大に17点差をつけてインカレと同様ぶっちぎりの強さで優勝を飾った。安達監督(左写真)は「力を出せばこんなもの」と冷静なコメントを発したが、表情はとってもうれしそう。「優勝した3人が3年生。来年はまた4冠を狙える」と、早くも来シーズンの抱負も口にした。

 安達監督は日体大を率いて10年目になる。「来年からは松本慎吾(来年4月から日体大教員)をコーチに迎えて、さらに強化を図る。日体大をオリンピック養成所にするという気持ちで学生の強化にあたりたい」とも話した。北京五輪で日本の伝統を守った日体大OBたち。その先輩たちの背中をおいかける日体大チームが、五輪シーズンの学生最終戦を優勝で締めくくった。

(文・撮影=増渕由気子)


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