【特集】東日本学生秋季新人戦で日大が4階級制覇! 復活の序章となるか【2008年12月1日】



 2004年アテネ五輪、2008年北京五輪と2大会連続で日本協会の強化委員長を務めた富山英明監督が率いる日大。今年は春から低迷し、不本意はシーズンだったが、学生最後の大会である東日本学生秋季新人戦で4選手が優勝し、2選手が3位入賞。復活への兆しを見せた(右写真=入賞者たち。左からフリー66kg級優勝生天目達也、フリー55kg級優勝・須藤学、グレコ120kg級優勝・相沢優人、フリー84kg級優勝・永田裕城、グレコ96kg級3位・森龍之進、フリー60kg級3位・矢後慎太郎)

 近年は優秀な選手が生まれていた。今年からコーチに就任した2006年世界選手権3位の高塚紀行をはじめ、2006年世界選手権フリー84s級代表の松本真也(警視庁)、2007年アジア選手権優勝の斎藤将士(警視庁)など、日本代表選手を多く輩出し、大学対抗戦では常に優勝争いに加わっていた。

 しかし、今年度は5月の東日本学生リーグ戦でグループ3位に沈み、8月の全日本学生選手権では優勝なし。9月の全日本学生王座決定戦は2回戦で早大に1−6で敗れ、10月の全日本グレコローマン選手権と11月の全日本大学選手権大会でも準優勝が最高だった。

 2008年、ナショナルチームを率いた富山監督の最大の使命は北京五輪で日本勢が活躍することだった。日大は監督不在の中、学生主体で試合や合宿を行うことも多く、「今シーズンは元気がなかった」と、練習によく顔を出していたある日大OBは振り返る。その雰囲気を立て直せずに、シーズン後半も失速してしまった。

■「2位、3位では満足してはいけない」。高塚コーチのメッセージに選手が奮起

 だが、北京五輪選考後、大学のコーチ職に本腰を入れた高塚(左写真)の熱烈指導もあり、団体の最終戦となる全日本大学選手権では、120s級の相沢優人が2位に入り、来季の主将になる紋谷哲平が60s級で3位、55s級の須藤学も3位に入り、回復の兆しをみせた(総合は6位)。

 ここで、高塚は学生たちに熱いメッセージを送った。「日大は2位、3位で満足してはいけない大学。表彰台で満足していると、次は5位、6位になってしまう」と頂点を目指すことが大切だと説いた。これに触発された学生たちが学生の大会最終戦の新人戦で力を発揮。

 昨年、鳴り物入りで日大に入学したフリースタイル84s級の永田裕城をはじめ、3人の2年生が自身の新人戦最終戦でキッチリ優勝した。特に相沢は1年生でフリースタイル120s級を制しており、今大会のグレコローマン120s級を勝ち抜いたことで(右写真)両スタイルのタイトルを手に入れた。

 富山監督は、「一番頑張ったのは1年の生天目(なばため)達也かな」とルーキーを評価した。霞ヶ浦高でキャプテンを務めた生天目は、春季新人戦も優勝候補だったが、アジア・ジュニア選手権の関係で出られなかった。新人戦は1、2年生の登竜門とされている。生天目は「ここで優勝しないと、(エリートコースから)脱落すると思った」と、高校レスリング界の雄・霞ヶ浦高の元主将の意地で優勝。優勝後、1時間後に開始されたグレコローマンにも挑戦した。

 結果は初戦敗退だったが、「グレコローマンも高校で2番になったことがある。グレコの練習も積極的にやりたい」と、当面は両スタイルの練習でレスリングに磨きをかけることを宣言した。

 決して順調ではなかった日大の2008年シーズン。だが、グレコローマンの優勝大学が全階級で違うという、戦国時代の始まりを予感させた新人戦において、日大は両スタイルで4階級を制して強さを見せた。「優勝戦線に絡むにはもう少し時間がかかるかも」と富山監督は辛口コメントでチームを評したが、日大が復活の足がかりを作った大会になりそうだ。

(文・撮影=増渕由気子)


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