【全日本選手権優勝選手】女子67kg級・井上佳子(中京女大)【2008年12月22日】



 昨年の世界選手権67kg級で5位に入賞した井上佳子(中京女大)が、決勝で高校生の飯島千晶(東京・安部学院高)と対戦。ビッグポイントこそ奪えなかったものの、安定した試合運びで勝ち、2年ぶり2度目の優勝を遂げた。井上は「決勝では思い通りのレスリングができなかった。もっと自分からタックルしたりして攻めたかったのに、相手の動きを待ってしまった」とちょっぴり悔しそうな表情を作った。

 愛知・至学館高3年生だった2006年12月に67kg級で全日本選手権を制覇。翌年の世界選手権で3位決定戦出場を果たすなど大躍進。オリンピック階級ではないとはいえ、5位入賞という成績は立派。

 しかし、その後、59kg級に活路を見出した。ウエートを上げたり下げたりという行動は、いかにも大変そうに思えるが、井上は「59kg級に落として試合をしたのはいい経験になったけど、自分に合った階級ではなかった。世界選手権に出場するために67kg級に戻した」と涼しい顔でウエート変更の理由を説明した。

 普段の体重が65kgくらいというから、本来なら63kg級で戦うのが理想的だ。ただし、このクラスには中京女大の大先輩にして五輪2度金メダリストの伊調馨(ALSOK綜合警備保障)が存在する。「練習でも馨さんにはまだまだ及ばない」という井上にとってみれば、まずは減量の必要がなく、思い切った動きのできる67kg級で世界選手権に出場し、金メダルを獲得することが当面の目標となる。

 実績を作り、同時に実力を磨き、ほどよいタイミングを狙ってオリンピック階級の63kg級で勝負をかける。これが井上の描く青写真である。「4年間で自分がどこまで馨さんに近づくことができるか」。井上の目はしっかりロンドンを見据えていた。

(取材・文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)


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