【全日本選手権優勝選手】男子グレコローマン60kg級・佐藤亮太(日体大)【2008年12月23日】



 2007年世界選手権の銀メダリストで3大会連続五輪出場の笹本睦(ALSOK綜合警備保障)が66kg級にエントリー。本命不在で混戦が予想された男子グレコローマン60kg級のトーナメントから抜け出したのは、学生王者にして笹本の大学の後輩、佐藤亮太(日体大)だった。

 2回戦で同門の渡辺翔太との激戦を制した佐藤は、準決勝で優勝候補の筆頭と目された明治乳業杯全日本選抜選手権優勝の北岡秀王(クリナップ)と顔を合わせた。この一戦を「笹本さんにもほめてもらったことがある」という得意のスタンドで主導権を握り、勝利に結びつけると、決勝では全日本選抜選手権2位の谷岡泰幸(自衛隊)と対戦。試合は第3ピリオドまでもつれる接戦となったが、最後は谷岡のクロス・ボディ・ロックを巧みに抜け出し、勝利の瞬間はこん心のガッツポーズを決めた。

 どちらかといえば遅咲きの選手である。中学1年でレスリングを始め、青森・八戸工大一高時代は東北大会優勝が最高成績。「中学の頃はただがむしゃらにやって、高2になってようやくルールを覚えた」というから、全国大会では1、2回戦負けというのも無理はない。全国から優秀な選手が集まる日体大に入学後も、なかなかタイトルには恵まれなかった。

 しかし、今季になって才能が花開き、ついに全日本学生選手権のタイトルを獲得。迎えた今大会は「負けたらレスリングは大学で終わりと決めていた」という背水の陣でマットに上がり、見事に結果を残した。

 地元に帰って居酒屋でも開き、のんびりと暮らそう−。負けた場合にそんなプランを思い描いていたという佐藤は「今日は攻撃は良かったけど、守りが良くなかった。これからも日体大で練習を続けて、弱点を克服していきたい」と、今後は一層レスリングに精進して、2012年ロンドン五輪を目指す決意を表明。ただ、卒業後の就職先が決まっていないため「これでスポンサーがついたらありがたいのですが…」と支援者の出現に期待していた。

(取材・文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)


《iモード=前ページへ戻る》
《前ページへ戻る》