【全日本選手権優勝選手】男子フリースタイル66kg級・米満達弘(拓大)【2008年12月23日】



 2004年アテネ・2008年北京両五輪代表の池松和彦(福岡大助手)が大会2連覇を狙ったフリースタイル66s級は大波乱の展開の末、学生二冠王の米満達弘(拓大)が制した。

 池松が準決勝で全日本大学選手権2位の森川一樹(山梨学院大)敗退し、反対のブロックでは2006年ドーハ・アジア大会銀メダルの小島豪臣(K−POWERS)が2回戦で負った左ひじの負傷により3回戦を棄権という波乱。決勝戦は学生対決となり、2005年に当時早大だった佐藤吏(現ALSOK綜合警備保障)以来、3年ぶりに学生での全日本王者が誕生した。セカンド・セコンドで試合を見守った元プロ格闘家の須藤元気監督も「しっかり勝ってくれてよかった」と安堵の笑みを浮かべた。

 拓大にとっても現役生の全日本制覇は2004年の磯川孝生(山口県協会)以来4年ぶりの快挙。だが、須藤監督の笑顔とは対照的に米満は勝利のブザーが鳴っても、白い歯を見せることもなく、ガッツポーズもなし。セコンドについた西口茂樹部長も同じく笑みはなかった。その理由はただ一つ。オリンピックに出るレベルの試合内容ができていなかったことだ。

 西口部長は、米満が2012年ロンドン五輪で金メダルが取れる逸材と確信している。だからこそ厳しい言葉を投げかける。「そんなんじゃ、オリンピックに行けないよ」―。11月の全日本大学選手権(新潟)でも内容が悪かった米満にセコンドから厳しい言葉を浴びせた。

 8月の全日本学生選手権では非の打ち所がない完ぺきな試合内容で連覇したものの、その後は調子が下降気味。先輩レスラーたちには自分のレスリングが堂々と展開できるが、後輩レスラーに対しては「負けてはいけないと、勝ちにこだわりすぎてしまう。タックル返しが怖い」と本音をこぼした。米満の売りは遠間からのしなやかなタックル。そのタックルをいつでも繰り出せる勇気を持てるかが今後の課題になりそうだ。

 拓大のシングレットで最後の試合を終えた米満は来春から自衛隊に所属する。大学4年生で学生タイトルを総なめにし、7月の世界学生選手権で金メダルを獲得したが、「大学での目標は北京五輪で金メダルだったので、悔いが残ります」とキッパリ。自分に厳しい米満が冬の遠征で“世界レベル”への格上げを目指す。

(取材・文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)


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