【特集】歴代2位目指す小幡邦彦(ALSOK綜合警備保障)は、プロの挑戦眼中になし2007年1月23日】








 山本“KID”徳郁のレスリング復帰が話題になっている今回の天皇杯全日本選手権(1月26〜28日、東京・駒沢体育館)。プロ格闘家としてもう一人、シドニー五輪フリースタイル63kg級代表の宮田和幸(フリー)も出場する。KIDが7年2ヶ月ぶりの復帰であるのに対し、こちらは2年9ヶ月のブランクを経ての復帰。プロ入りする前の実績なども考えれば、上位へ食い込む可能性はKIDよりあると考えていい。

 プロ入り前はフリースタイル66kg級だった宮田だが、今回出場するのは同74kg級。受けて立つ形となったのは、昨年まで7年連続優勝を続けている小幡邦彦(ALSOK綜合警備保障
=左写真)。今回優勝すれば8年連続優勝となり、恩師の高田裕司・山梨学院大監督らと並ぶ歴代2位タイとなる。26歳での記録達成は高田以来2人目。小幡にとっては、あらゆる意味で注目される大会になる。

 しかし小幡は、宮田の参戦を「出てくる選手の一人。意識はしていないです。苦手なタイプではありませんので、いつも通りにやれば大丈夫でしょう」と、全く意に介していない。宮田とは、日本代表としてともにシドニー五輪を目指した間柄であり(小幡が76kg級で、宮田が63kg級=小幡は出場権を獲得できず)、2001年の世界選手権では宮田が1階級上げて日本代表になったので、1階級下の選手
(右写真=2001年世界選手権で闘う宮田)。何度も練習した間柄だ。

 「技の切れはある選手でした。ブランクがあっても、それが衰えることはないでしょう」と警戒しつつも、総合格闘技の練習を積んでいるとレスリング流の体力を取り戻すのは大変だとみている。「油断はできません」とプロへ進んだ先輩に敬意は表しているが、ワン・オブ・ゼム(大勢の中の一人)という姿勢。

 歴代2位となる8連覇については、「(高田監督は)世界でも連覇している選手。並んだといわれても…。意識すると硬くなってしまうので、考えないようにします」と話し、こちらもあまり意識の中にはない。長島和幸(クリナップ)との闘いが、3大会連続で2ピリオドとも1ポイント差での勝利では、そちらの方に気がいくのも当然だろう。

 特に、昨年のこの大会と今年6月の明治乳業杯全日本選手権では、計4ピリオドが0−0に終わり、コイントスに勝ってクリンチの末の勝利だった。コイントスで負けていたら、勝敗はどう転んだから分からないという内容。世界で結果を出すためには、国内でこうした苦戦を強いられていてはならないだろう。

 だが小幡は“苦戦”という表現を否定。「第1ピリオドを取ったから、第2ピリオドもコイントスにもつれたんです。第1ピリオドを取られていたら、しっかり攻めました」と、勝つことに徹したがゆえの結果だという。長島は苦手なタイプではないので、ポイントを取られる心配はさほどなく、苦しんだという思いはないようだ。

 2分3ピリオド制の現行ルールでは、1−0であろうが5−0であろうが、そのピリオドを取った価値に変わりはない。5−0で勝っても、体力を消耗してしまっては後が続かないので、あえてポイントを狙わないことも必要。1−0、1−0であっても、本人に「負けるかも」という感触がなければ「快勝」と言える。小幡は、周囲が思っているほど長島に苦戦したという感覚は持っていない。「むしろ、高橋龍太(自衛隊=2004年2位)の方が、やりづらいタイプ」とのことだ。

 昨年は、3月のダン・コロフ国際大会(ブルガリア)と8月のベログラゾフ国際大会(ロシア)でともに3位に入りながら、世界選手権とアジア大会というメジャー大会では、世界が初戦敗退でアジアが5位に終わり、結果を出せなかった
(左写真=アジア大会で闘う小幡)。「負けた試合は必ず脚を触らせていた。強い選手のビデオを見たけど、最後まで構えが変わらず、相手の崩しにも崩されない強さがある。崩されないということは、後半になってもバテないということ。田岡(秀規=55kg級)も同じことを言っていた」。

 何度も世界で闘っている選手だが、闘う度に学ぶことが出てくる。アジア大会が終わった後は、体の軸の安定を主眼において練習を重ねてきたという。「今年の世界選手権はオリンピック(の出場権)がかかっています。プレーオフにもつれることなく日本代表を取りたい」。

 練習の成果を世界の舞台で試すには、国内でもたついていられまい。8連覇やプロ格闘家の挑戦など眼中にない。世界、そして北京オリンピックを目指した小幡の挑戦が続く。


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