【優勝選手特集】男子グレコローマン55kg級・豊田雅俊2007年1月28日】







 昨年6月の全日本選抜選手権決勝で平井進吾(ALSOK綜合警備保障)に敗れ、手に入れかけた「不動の王者」の称号が遠ざかった男子グレコローマン55kg級の豊田雅俊(警視庁)。その大会はプレーオフでは勝利し、世界選手権のキップは譲らなかった。今回は「自分の方が運が良かった」と控えめだが、平井に1点もやらずに快勝し、2年連続4度目の優勝を決めた。

 平井は全日本の舞台ばかりでなく、同じ拓大出身としてふだんの練習でも顔を合わせる相手。お互い手の内は知り尽くしていた。全日本選抜選手権では接戦を繰り広げたが、今回は失点すらなかった。第1ピリオドはスタンドで3点を先取し、グラウンドでも俵返しが決まってテクニカルフォール。第2ピリオドはグラウンドの攻防で、自分の攻撃時だけでなく、相手の攻撃時もテークダウンを取って完勝した。

 「世界選手権でもアジア大会でも、あと一歩メダルに届かなかった。だから全日本選手権ではしっかりレスリングをしないと…」と気を引き締め直して臨んだ大会だった。一度負けた相手だからといって、国内の大会に臨むにあたって不安を抱えるようなことはなく、むしろ、世界に目を向けて臨んだ大会だった。

 平井が2回戦で長谷川恒平(青山学院大)に苦戦を強いられたのとは対照的に、豊田は難なく試合をこなした。全試合を通しても失点はゼロ。「たまたまです」と本人は謙遜するが、今回の意気込みがそのままこの結果につながったといえる。

 近づいてきた北京五輪に向け、「まだまだやらなきゃいけないことはいっぱいある」と力強い。平井だけでなく若手も力をつけてきたが、豊田の成長もまだ止まらない。

(文・神谷衣香、撮影・矢吹建夫)


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