【特集】チャンピオンの哲学貫いて坂本に連勝…48kg級・伊調千春【2007年4月15日】







 48kg級は、昨年の世界チャンピオンであり、全日本選手権の覇者の伊調千春(ALSOK総合警備保障)が坂本真喜子(自衛隊体育学校)の“挑戦”を再度はね返し、世界選手権出場のキップを手にした。

 準決勝の赤坂幸子(三井ク)戦で1ピリオドを失い、冷や汗をかいた伊調だったが、ここ一番での強さはさすが。この大会までの通算成績で5勝1敗と相性のいい坂本を、固いディフェンスを全面に押し出す得意のレスリングで迎え撃った。

 今回の一戦にすべてをかける坂本も、過去の反省からか、不用意なタックルは極力控えたようで、第1ピリオドは0−0でコイントスに持ち込まれた。ディフェンスに回った伊調だったが、ここを落ち着いて対処し、体を預けて坂本を押し崩して自らのポイントへ。こうなると、坂本に焦りの色が見えてきた。結局、第2ピリオドも伊調が終盤に冷静にタックルを裁き、連覇を達成した。

 相手の出方をじっくりと見て、あまり攻撃しなかったディフェンシブな闘いが批判されるかもしれないが、伊調は語気を強めて反論する。「攻めてポイントを取られるくらいなら、攻めない方がいい。世界に出ると、外国人選手は攻めてこないですよね。相手によってどう闘うか、ということが大事で、『攻めない』と言われるけど、真喜子と闘う時はこれからもああいう戦い方をすると思います」。勝利に対するチャンピオンのの哲学だった。

 ライバル対決に勝利し、これで9月の世界選手権に勝てば北京五輪出場が内容する。伊調は「オリンピックが近づくにつれ、アテネでの銀メダルを思い出してくる。北京では今度こそ金を取りたい」とリベンジを宣言。気持ちは早くも北京を見据えていた。

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)


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