【特集】高速タックル連発で快勝…55kg級・吉田沙保里【2007年4月15日】







 5年に渡って世界一の座(世界選手権4度、アテネ五輪1度)を守り続けている55kg級の吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)が貫録の6連覇を達成。国内外通算の連勝記録を「106」に伸ばした。

 決勝の相手は、1月末の天皇杯全日本選手権で接戦を演じた51s級世界チャンピオンの坂本日登美(自衛隊体育学校)ではなく、準決勝で坂本を下したアジア選手権王者の松川千華子(ジャパンビバレッジ)だった。予想外の展開にも「自分はどちらが上がってきても勝つだけだと思っていた」という吉田は、試合開始直後こそ相手の動きを見る展開だったが、1分ごろからアクセルを全開。世界をうならせる高速タックルからビッグポイントを連発し、女王の名にふさわしい戦いぶりで圧勝した。

 第1、2ピリオドとも、グラウンドへ持ち込みフォール勝ちを狙うアクションが続いた。特に第2ピリオドは8−0となり、その段階でニアフォールを解いてもテクニカルフォールで勝った場面だったが、あくまでもフォールを狙って試合を続行。結局2分間を闘うといった内容だった。吉田は「自分はポイントは取るけどフォールを取れないところがある。これからは、押さえるところは押さえる固め技も練習していきたい」と、圧勝の中に課題も見つけた様子だ。

 「これで北京五輪が決まったようなもの?」との質問には「本当に何が起きるか分からないし、けがをしても終わり。9月までは気を抜かずに北京まで連勝を続けたい」と五輪連覇に向け、気持ちを引き締めていた。

 階級を上げて北京オリンピックを目指す坂本は、松川の気迫のレスリングに足元を救われた。吉田が9月の世界選手権で優勝すれば北京五輪出場が内定するため、この日の敗戦で五輪出場はほぼ絶望的。目標とするライバルではなく、勢いのある若手に夢を断たれた坂本はただ号泣するしかなかった。

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)


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