【特集】闘いの幅を広げ12度目の世界選手権へ…72kg級・浜口京子【2007年4月15日】







 柔道の強豪(佐野明日香=自衛隊)のレスリング転向により、これまでの国内大会以上に熱戦が予想された72kg級だが、終わってみれば世界V5の浜口京子(ジャパンビバレッジ)が強さを見せ、9年連続11度目の優勝を達成。2年ぶりにジャパンビバレッジ杯を受賞した。

 力強さだけではなかった。浜口のタックルといえば、正面からパワーにものを言わせて押し倒すタックルが多かったが、この大会では、片足タックルからくぐり抜けるようにバックへ回るタックルを準決勝と決勝で1度ずつ披露。グラウンドでも、あまり見せたことのないガッツレンチを決めた。

 剛速球投手が、変化球をおりまぜながら相手を翻ろうする術を身につけて投球の幅を広げたような闘い。浜口は「いま練習していることです」とにっこり。決勝で闘った佐野はレスリングに転向して4ヶ月半で、今が一番多くのことを吸収し成長している時期と思われるが、「私もすべてにおいて強化が進んでいます」と、自らの実力アップに自信を見せた。

 12度目の世界選手権出場(他に五輪1度)を決める闘いでもあった。もう、すっかり慣れっこになったとも思われるが、北京オリンピックへの道がつながっているとなると、“いつもとは違う大会”となる。「モチベーションを高め、精神的にも肉体的にも、極限まで追い込んだ」という大会前。「(勝てて)ホッとしました。自分の殻をぶち破ったような気持ちでした」と言う。

 世界の72kg級は、昨年の世界チャンピオンのスタンカ・ズラテバ(ブルガリア)が2月に昨年欧州10位のダリア・ナザロバ(ロシア)に負け、アテネ五輪の金メダリストで浜口のライバルでもある王旭(中国)が3月のワールドカップでそのナザロバにフォール負けするなど、混戦模様となってきた。

 数年前までのように、2か国くらいに照準を絞ればいいという状況ではなく、中国、ロシア、米国、ブルガリア、カナダなどをマークする必要があるわけで、強豪との連戦に連勝する体力と精神力がこれまで以上に必要になってきた。技の幅が広がったこととともに、「もっと練習を積んでいかなければ。すべてにおいて追い込んでいきたい」と話す浜口の気持ちの充実は頼もしい限り。世界選手権までの5ヶ月間を、全力疾走してくれることを期待したい。

(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)



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