【特集】強固な軽重三本柱! 優勝の鍵は中量級の専大…東日本学生リーグ戦【2007年5月3日】







 5月10日から2週にまたがり、東日本学生リーグ戦が東京・駒沢体育館で行われる(決勝は18日)。10年ほど前までは日体大が“絶対王者”を築いていた学生レスリング界だが、最近は有力選手が各大学に散らばり、優勝争いはし烈を極めている。

 日体大、日大、拓大、山梨学院大…。ここ数年、優勝に名を連ねた大学に割って入り、優勝を目指すのは1988年ソウル五輪フリースタイル52kg級金メダリスト、佐藤満コーチ率いる専大だ
(右写真=熱心に指導する佐藤満コーチ)

■層の厚さでは日本一! 重量級の専大

 今年の専大は、55kg級に学生王者の稲葉泰弘、96kg級に2006年世界選手権フリースタイル120kg級代表の北村克哉の4年生が固める。120kg級には、昨年1年生ながら学生二冠王に輝いた荒木田進謙が控え、ゆるぎない3本柱がいる。

 荒木田は4月21〜22日のJOC杯ジュニアオリンピックで3連覇する強さも見せた。しかし、ひざをけがし、リーグ戦はけがの状況を見ながら出場を考えるそうだ。しかし、万が一にも荒木田欠場となっても、JOC杯フリースタイル96kg級2位の馬場裕太郎がおり、重量級の選手層は厚い。

 問題は、重量級へ勝負を持ち込めるかどうかだ。昨年はグループ3位に終わり決勝進出はならなかった。55kg級の稲葉が全試に合出場し無敗と気を吐いたものの、日体大戦と早大戦では中量級が踏ん張れず、120kg級の荒木田までにチームの敗戦が決まってしまった。

 それは今年も同じ状況。佐藤満コーチは「66kg級の林田がけがで絶望です。林田がいればキッパリと優勝宣言できるんですけどね…」と、世界に通じる選手3何人も擁しながら、けが人続出でベストメンバーを組めないもどかしさを吐露した。

■キーパーソンは中量級の細越

 「稲葉以外の中軽量級で1つ取れるかがカギ」(佐藤コーチ)。この期待のほこ先は、66kg級の細越孝紀(3年、青森・光星学院高卒=
左写真)に向けられている。レスリングのセンスは光るものを持っているが、チーム内のあだ名は、なんと「練習チャンピオン」ならぬ「練習番長」−! 「自分の作戦がはまらないと頭が真っ白になってしまう」(本人談)そうで、試合では各下の選手にも負けてしまうことがあるという。

 決勝進出のために避けて通れないのが拓大戦と日大戦。細越は、拓大戦で藤本浩平(2005年全日本2位・学生王者)、日大戦で高塚紀行(2006年60kg級世界3位)との対戦が予想される。拓大、日大ともに中軽量級に強豪選手をそろえており、細越の頑張りが勝負の流れ、すなわちチームの勝敗を左右することになる。

 「キーパーソンは自分だと分かっています。足を引っ張らないようにがんばります」。今年3年生で伸び盛りの細越が、このリーグ戦で“練習番長”のあだ名返上を誓った。

■軽量級の逸材・稲葉がチームを引っ張る

 佐藤コーチが専大で指導を始めて今年で9年目になるが、まだ東日本学生リーグ戦の優勝はない。専大と言えば、重たい階級は毎年安定した戦力を誇る一方で、軽量級が穴だった。現在、その軽量級を支えているのが主将の稲葉だ。「組み手がうまく、タックルに入るタイミング、受けにも粘りがある」と、選手を褒めないことで有名な(?)佐藤コーチも目を細める。

 今後、間違いなく日本の軽量級を背負っていく逸材で、「世界の方が実力を発揮できるタイプ」と佐藤コーチのイチオシ。そんな稲葉は、前述の通り昨年のリーグ戦は全試合出場して無敗。中量級に不安をかかえるチーム事情もあり、主将として、また“切り込み隊長”として、「全試合フォール勝ちでチームに勢いをつけたい」と、内容にも高いハードルを課した。

 北京五輪を見据えて、6月9〜10日の明治乳業杯全日本選抜選手権(東京・代々木第二体育館)にも照準はしっかり合わせるつもりだが、専大のキャプテンとして母校に錦も飾りたい。あまり多くを語らない稲葉主将だけに、言葉少なに語る一言一言に、リーグ戦で優勝したいという気持ちが十分に表れていた
(右写真:チームのキーパーソンとなる細越とスパーリングをこなす稲葉=下)

 「五輪への一過程としてリーグ戦がある」(佐藤コーチ)と、学生に常に五輪という高い目標を持たせるのが佐藤コーチの指導方針。その下で育った選手たちが、リーグ戦でその真価を見せることができるか。

(文・撮影=増渕由気子)


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