【特集】王者日体大は四冠宣言! 今年こそ完全復活する…東日本学生リーグ戦【2007年5月6日】








 過去24度の優勝経験のある“学生レスリング界の雄”日体大が本格的に王座奪回へ乗り出す−。31年ぶりに無冠に終わった2005年の屈辱から這い上がり、2006年は背水の陣で王者に返り咲いた日体大。ことしは“連覇”を合言葉にリーグ戦を制し、その勢いで四冠達成を目指す。軽量級のエースだった60kg級の全日本王者の湯元健一が卒業したものの(日体大助手へ)、層の厚い日体大の戦力が落ちることはない。安達巧監督が「4冠を狙っていきます」と言えば、斎川哲克主将(左写真の左)も「最低でも4冠でしょう。リーグ戦も圧倒的に勝ちますよ」と口をそろえた。

 “ゴールデンエイジ”と呼ばれ、湯元健一、松本真也(日大=2006年世界選手権代表)など学生ながら全日本を制した選手が多かった昨年の4年生。今年のチームはその戦力が抜けて、どの大学もメンバー構成に苦戦している。その点、80人を超える部員をかかえる日体大は安泰だ。

 55kg級は、昨年インカレ準優勝の富岡直希とJOC杯ジュニアオリンピック優勝の石山雄平の二枚看板でチームに勢いをつける。60kg級にはインカレ3位の菊池憲が湯元が抜けた穴をしっかり埋める。菊池は、昨年のインカレで高塚紀行(日大)と互角近くにやりあっており
(写真下の左)、実力は折り紙つき。斎川主将も「高塚戦で自信をつけたみたいです」と信頼しており、出だしの2連勝は確実だ。

 「問題は中量級」と安達監督は課題を挙げたが、その表情は明るい。今年のJOC杯ジュニア・フリースタイル66kg級準優勝の志土地翔太ら、ブレークしそうな選手が顔をそろえる。「万が一、中量級で劣勢になっても、(84kg級に)門間順輝がいますから」と斎川主将も余裕顔。そして、自らが96kg級で勝負をつける予定だ。フリースタイルの主将として臨む富岡も「自分たちが一番練習してるんだから自信を持ってやるだけ。僕は1点もやりません」と気合十分だ。

 日体大が決勝に駒を進めるためには、早大と山梨学院大がヤマ場になるだろう。無冠に終わった2005年は、早大戦での敗戦が痛かった。安達監督は「あの時は全部クリンチでやられた。その反省を生かして、去年は2分間で勝負をつけさせました。おかげでほぼクリンチなしで内容もよく、優勝できたんですよね」と昨年を振り返る。「だから今年も同じスタイルで勝ちますよ」と先制攻撃でライバル・チームに引導を渡すことを宣言した。

 「優勝したい」―。斎川主将、富岡ら4年生がリーグ戦で日体大完全復活を望む理由が2つある。ひとつは、常勝軍団・日体大に入学したのに、まだ団体戦で“連覇”を遂げたことがないのだ。「昨年獲ったのはリーグ戦だけですから、今回が最後の連覇のチャンス」と斎川主将。本職はグレコローマンで、6月9〜10日の全日本選抜選手権ではグレコローマン84kg級にエントリーしたが、現在はフリー中心に猛特訓中だ。

 もうひとつの理由―、それは昨年11月のこと。日体大レスリング部は不祥事によって年内いっぱいの活動停止の処分を受け、その間に行われた全日本大学選手権には出場することも許されなかった。「試合で負けたんなら納得できますけど、出ないで終わってしまって、悔しかったです」(斎川)、「すぐ切り替えはできましたけど……」(富岡)と不完全燃焼でシーズンを終えてしまった過去がある。

 不祥事のイメージを払拭すべく、今年の4年生は下級生に対するケアにも力を入れている。「みんなで話し合って、あいさつ、掃除面など生活面を一から見直しました」(富岡)。ミーティングを重ねた結果、部員80人の結束力も例年以上のものになったようだ。戦力的には今年も優勝候補最右翼なのは間違いない。あとは本番で力を発揮するだけ。十字架を背負った日体大がこの春に完全復活の足がかりをつくる
(左写真=2005年世界5位の松永と練習する富岡)


(文・撮影=増渕由気子)



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