【特集】日本一の激戦区で優勝候補へ躍り出る…男子フリー60kg級・大館信也【2007年5月6日】








 日の丸を胸に、さらには両足のシューズにもつけた大館信也(自衛隊)が、決勝で地元キルギス期待のバザル・バザルグルエフに敗れたものの、日本人選手大会第1号となるメダルを獲得した(右写真)

 1回戦でガズワン・ラシカニ(シリア)に3−0、7−0と圧勝した大館は、続くビタリ・コルジャキン(タジギスタン)との2回戦では第1ピリオド0−0となり、コイントスの結果、不利な体勢となりながらも粘り、マット際で逆に返して2−0。第2ピリオドも勢いに乗って3−0で取った。

 だが、「大会前からマークしていた」というケルマニ・メフディ・タガビ(イラン)との準決勝では、積極的に攻め込めることができず、第3ピリオドまでもつれ込んだときには、「弱気の自分に涙が出そうだった」と言う。

 それでも、日本を発つ前に所属する自衛隊コーチでもある和久井始・全日本フリースタイル・コーチから「必ずメダルを取れ」と檄を飛ばされたことを思い出した。「最後に一本、何が何でも決めよう」と巻きの一本背負いで3ポイント。さらに、同じような一本背負いを決め、12−5で制し、決勝戦へ進出した。

 決勝はキルギスタンの旗がなびき、地元選手への大声援が響く中で行われた。「フェイントに行っただけで大ブーイング。勝っているのか、やられているのかわからず、自分を見失った」と振り返る大館は、第1ピリオド0−0のあと、コイントスで有利な体勢を得ながらも返されると、気落ちの切り換えが十分にできず、集中力を欠いたまま第2ピリオドへ。アンクルホールドを連続で受けてしまい完敗した
(左写真)

 「イランに勝ち、これで優勝できると思った。油断? そうですね。決勝戦は不完全燃焼、気持ちが入っていませんでした」。目標としていたメダルを首からかけたものの、納得できない表情で悔しさをにじませた大館だが、「全日本選抜選手権(6月9〜10日、東京)につながる試合ができ、ほんの少しですが 自信をつかむことができました。今回見つかった課題を克服し、選抜で勝って、プレーオフで湯元(健一=全日本チャンピオン、日体大助手)を倒して、必ず世界選手権へのキップをもぎ取ります」と気を取り直した。

 アジア選手権銀メダリストならば、国内の大会の優勝戦線に加わるのは当然のこと。日本一の激戦区、フリースタイル60kg級は、6月の決戦に向けさらに厳しさを増してきた。

(文=宮崎俊哉)


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