【特集】攻撃精神が裏目に出て逆転負け…男子グレコローマン55kg級・豊田雅俊(警視庁)【2007年9月17日】







 「先陣を切る気持ち」を胸に日本選手で最初にマットに上がった男子グレコローマン55kg級の豊田雅敏(警視庁)は、初戦のパベル・クラマシュ(ポーランド)を手堅く倒した。だが続く2回戦で今年のパンアメリカン大会で優勝したヤグニエル・エルナンデス(キューバ)に敗れ2回戦で姿を消した。

 この日の豊田は、コイントスで先に攻撃権を取ることがほとんどできなかった。が、守りから始まる不利な状況でも粘りがあった、1回戦の第3ピリオドでは、防御の体勢から立ち上がって相手の攻撃をしのぎ、攻撃に転ずるや、がぶり返しを決めて2回戦進出を決めた。

 その2回戦の第1ピリオド、グラウンドの守りの際に1回戦で見事に決まっていたエスケープを狙ったが、体勢を崩しニアフォールへ。だが、自身の攻撃の残り5秒で落ち着いてローリングを決める粘り(2―2)。ラストポイントでまず第1ピリオドを先制した。

 第2ピリオドは落とし、勝負は第3ピリオドへ。ここで勝利は目の前にあった。この日初めてコイントスで勝って先にグラウンドの攻撃権を取り、技こそ決まらなかったが、残り30秒の防御を守り抜けば豊田の勝利が確定するところだった。しかし、試合を終えた豊田の口から出たのは「失敗しました」−。

 守り切って逃げ切ればよかった状況の中、立ち上がった豊田の目に入ったのはエルナンデスの背中だった。「普段からポイントを取る練習をしていた」という豊田は、すかさず胴タックルでテークダウンをとりにいった。落とし穴はそこにあった。

 バックを取ったあと手をたぐられ、それが抜けず、「相手の勝負に乗ってしまった」と、そり投げを受けてしまった
(右写真)。技が決まる前に足が出ていたのではないかと審判にアピールするも判定は覆らず、勝利の二文字をつかむことはできなかった。

 負けはしたものの、「動きは悪くなかった。ああいうところのかけひきがね…」と振り返った豊田。日本チーム最年長の世界選手権は終わりを告げたが、最後まで攻めるレスリングにこだわった姿勢が、残る五輪代表予選に生きてきそうだ。

(文=藤田絢子、撮影=矢吹建夫)



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