【特集】クリンチの攻撃権奪取を生かせず…男子フリースタイル84kg級・鈴木豊(自衛隊)【2007年9月20日】







 大会2日目に同じ自衛隊に所属する男子グレコローマン96kg級・加藤賢三の活躍で「いいムードができた。その波に乗りたかった」とマットに上がった男子フリースタイル84kg級の鈴木豊(自衛隊)は、1回戦で1点も取れないまま0−2(0-2,0-1)で黒星。敗者復活戦へ回ることなく初出場となる世界選手権を終えた。

 「自分のいいところを出せないまま終わってしまった」。この一言がすべてを物語っている。第1ピリオド、ポーランドのホービクの右足にもぐりこむようにしてタックルを狙ったが、逆に返されて2点を奪われ、このピリオドを落とした。

 続く第2ピリオドも決め手を欠いて決着はクリンチへ。審判の手から放たれたコインの色は鈴木を示す赤。クリンチは攻撃側のが圧倒的に有利であり、第3ピリオドまで持ち込むためには、絶好の機会のはずだった。

 しかしホービクは「体が柔らかくて、変なふうに粘ってきて取り切れなかった」。一時は自らの右脚を取られ逆にテークダウンのピンチも迎え、それは辛うじてこらえてスタンド戦となったが、ポイントを取ることができなかった(右写真=ホイッスルの直後、鈴木は右脚を取られた)。日本にはいないタイプの選手だったそうで、その体の柔らかさの前に絶好のチャンスを逃してしまった。

 28歳で挑んだ初めての世界選手権では苦汁をなめる結果に終わったが、五輪の資格を獲るチャンスはまだ残されている。今後の課題を「勝負どころを見極めて、取るべきところで取ること」と挙げた鈴木。「自衛隊でグレコローマンの五輪出場権を一つ取った。フリースタイルでも取らなくてはいけない」と、フリースタイルで唯一の自衛隊代表選手としての闘志を燃やす。

 もちろん、五輪出場権獲得の前に12月の天皇杯全日本選手権で国内の敵を倒して日本代表になることが先だ。この数ヶ月、世界に挑戦するために積んできた外国人対策は決して無駄にはならない。「その練習を積み重ねていけば、国内では負けない」と自信を見せる。

 世界で味わった悔しさは世界のマットで返す。国内での戦いに勝ち抜き、再び世界の舞台へと鈴木豊は戻ってくることだろう。

(文=藤田絢子、撮影=矢吹建夫)



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