【特集】見事な飛行機投げ生かせず…男子フリースタイル120kg級・田中章仁(FEG)【2007年9月21日】







 2年ぶりの世界選手権へ臨んだ男子フリースタイル120kg級の田中章仁(FEG)は、初戦で05年欧州3位のエフスタシオス・トパリディス(ギリシャ)に敗れ、敗者復活戦に回ることもなく大会を終えた。

 試合開始直後はうまいレスリングを見せた。パワー十分で突進する相手に場外際まで押されてしまったが、ここで見事な飛行機投げ
(右写真)。相手の力を利用して技をかけるレスリングの極意のような素晴らしいアクションで3点を先制した。

 「狙っていたわけじゃないが、チャンスがあればかけようと思っていた」という得意技。パワーで押されながらも冷静に相手の動きを見て、見事なタイミングでかかった。しかし、この優位を生かし切れなかった。中盤、足技のかけ合いに負けて場外へ投げられて3失点。3−3のまま、ラストポイントによって第1ピリオドを落とし、第2ピリオドも力を出し切れなかった。

 飛行機投げが見事だっただけに、ここでフォールするか、5秒押さえ込んで1点を加えれば、勝負の行方はどうなったか分からない。「フォールできたかもしれない。結局、フォールへ持っていく技術が足りないんですね」。点ではなく、線にならなければならないレスリング。投げても次のアクションにしっかりつなげなければ、世界で通用しないことを感じたのでは。

 この日マットに上がった96kg級の小平清貴(警視庁)とともに、重量級の復権を目指して闘い続けている。当然のことながら、グレコローマン96kg級の加藤賢三(自衛隊)の五輪出場資格獲得に刺激は受けていた。

 それが硬さへとつながったか、それとも2年ぶりの世界選手権の舞台に必要以上の緊張感に襲われたのか、「体が思うように動かなかった」とも振り返る。「アップ不足とかではない。気持ちの問題です」と自己に厳しい反省を口にした。

 もともと、一発での出場資格獲得は厳しいと現実をしっかりと受け止めており、最終予選までに出場権を取るつもりでいた。今後の課題に「メンタル面を強化し、試合でいつもの力を出すこと」を挙げ、来春の勝負を見据えていた。

(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)



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