【特集】北京五輪での姉妹優勝に弾み…女子63kg級・伊調馨(ALSOK綜合警備保障)【2007年9月23日】







 やはり女子63kg級の伊調馨(ALSOK綜合警備保障)には表彰台の一番上がふさわしい
(右写真)

 2002年からの世界大会(世界選手権・アテネ五輪)で表彰台の常連となっている伊調は、この大会も初戦から2―0、1―0、2―1、2―0で勝って決勝へと駒を進める。決勝で2006年世界ジュニア選手権2位、今年のアジア選手権2位のエレナ・シャリギナ(カザフスタン)と対戦し、2―0(1-0,3-0)で快勝、世界選手権5度目、アテネ五輪を合わせると6個目の金メダルを獲得。“特等席”に最高の笑顔を咲かせ、君が代を聞いた。

■「調子がよすぎるくらい」だった準決勝までの4試合

 この日の伊調は、相手の攻撃を逆手にとり得点を積み重ねていった。2回戦から登場した伊調は、第1ピリオド開始30秒、相手がタックルにきたところを回りこみ、自分のポイントとした。準決勝でも先にタックルで攻撃されるものの、すぐさま切り返し点を奪ってみせた。「外国人のタックルは日本人と違ってすべて真正面からくるから、自分にとってはふせぎやすいし、(攻撃方法が)見えちゃう」。

 もちろん「タックルが一番武器」というように、カウンター攻撃ばかりではなく得意技もさえていた。宿敵の許海燕(中国)相手の4回戦では、両足タックルから一気のニアフォールに奪った
(左写真)。続く準決勝の元世界チャンピオンのリセ・レグランド(フランス)戦でも正面タックルと片足タックルで攻めて脚を取り、そのまま場外へ押し出す場面が2度みられた。
 
 その前の3回戦のベネズエラ戦では7点を挙げてのフォール勝ち。1分56秒で切り上げるなど調子は万全だった。磐石という言葉がぴったりな試合運びで予選の試合を終え、「調子がよすぎるくらい」と本人もびっくりの様子。もちろん「決勝で落とし穴がないようにもう一度しめていきます」と、気を抜くことは決してなかった。

 決勝の相手は初対戦のシャリギナ。一度試合をしたことがある選手との対戦となった午前中は相手のイメージがあったというが、初対戦となれば話はかわってくる。今年のアジア選手権(キルギス)で見ているはずだが、「全く情報がないから、肌で感じないと分からない。自分のレスリングをするだけです」と警戒心を強めた。

■姉・千春の優勝で弾みがついた!

 しかし、試合が始まると心配は杞憂に終わったことがわかる。顔を3度パンパンパンと軽くたたき、マットにのぼった伊調は、第1ピリオド残り十数秒というところで、ここでも相手のタックルを逆に利用し、1−0としてこのピリオドを制した。

 第2ピリオドに入ると先に仕掛けたのはシャリギナだったが、このタックルを耐え抜くと、つぶしてバックに回ってまず1点。そこからガッツレンチを決め
(右写真)、さらに2点を加え試合を決定づけた。

 快進撃を続ける裏には、一昨日の姉・千春(48kg級)の優勝が大きく影響していた。「千春が優勝したことで、自分も優勝したい」と気持ちに勢いがつき、「足の動きがよかった」と話した。本人は「緊張した。(決勝の)相手は力も強かったし、やったことがなかったからやりにくかった」と振り返ったが、落ち着いた試合展開と圧倒的な実力差を見せての優勝は、内容十分の優勝だったことは間違いない。

 優勝後、マット上で昨年同様、栄和人監督と木名瀬重夫コーチにかつがれ優勝の喜びをかみしめた伊調。「北京の前哨戦」と位置付けた今大会で2人そろって金メダルを取ったことで、「北京で2人で優勝したい気が強まった」。最高の笑顔をみせ、姉との夢をかなえる北京へと思いをはせた。

(文=藤田絢子、撮影=矢吹建夫)



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