【特集】地元国体準優勝で成長! 青学大初の2連覇達成…66kg級・板倉史也(青山学院大)【2007年10月19日】








 全日本学生グレコローマン選手権66kg級は2年連続で青山学院大の板倉史也が制した。日体大の成瀬一彦を破った瞬間、めずらしく雄たけびを上げ、拳を突き上げた(右写真)。「去年の優勝より3倍うれしい」と、準決勝で学生王者の藤本浩平(拓大)を下すなど、いばらのトーナメントを制しての優勝を喜んだ。

 青学大の主将として1年間チームをけん引した。口より態度で示す不言実行派。しかし、クールな外面とは裏腹に、負けん気は人一倍。高いレベルを求めて自衛隊などの出げいこも積極的に行い、自分をいじめ抜いた。「弱音を絶対に吐かない。我慢できないはずのケガをしても平静を装っている」(太田浩史コーチ)。だが、その気持ちが大事な試合で空回りしてしまうことが多かった。

 2005年の春季新人戦で優勝するなど頭角を現し、3年の全日本学生選手権(インカレ)では優勝候補の最右翼だった。しかし準決勝でいいところなく敗北。今年のインカレでも第1シードにもかかわらず準々決勝で不覚を喫し、表彰台にも届かなかった。板倉のウィークポイントは“プレッシャーに弱い”とレッテルを貼られてしまった。

 そんな板倉に転機が訪れる。今月初めに行われた秋田国体に、地元秋田の代表として出場した(注・秋田経法大付高=現明桜高=出身)。国体開会式で96年アトランタ・04年アテネ五輪代表の横山和秀(秋田商業教)が選手宣誓を行ったためか、レスリング会場も連日大にぎわい。地元の選手がマットに上が度に大きな声援が送られた。その声援が板倉にかかるプレッシャーを倍増させていた。

 少数精鋭の青学大は、他大学に比べると応援も少ない。学生の大会では、大所帯の相手チームの応援が飛び交う中、ヒール(悪役)のようにひょうひょうと勝利を挙げる。こんな光景が一般的だった。しかし、秋田代表として臨んだ秋田国体は違った。板倉がマットに上がると、会場の視線が板倉だけに注がれ、一挙手一投足に歓声が上がる。

 「本当に緊張した」と相当なプレッシャーの中で決勝戦まで闘い抜き、結果は2位。秋田の団体優勝に最低限の役割を果たすとともに、決勝では世界選手権60kg級銀メダリストの笹本睦(ALSOK綜合警備保障)と対戦するという“見せ場”も作った。大舞台を経て、「気持で負けなければ勝てる」と実感。お祭り的雰囲気が強い国体だが、板倉にとって国体は殻を破るいい機会となった。

 強い気持ちで臨んだ今大会は2回戦以外すべてストレート勝ち。決勝戦は、太田コーチが「4年間で一番よかった」と絶賛するほどで、本人も「集中ししていた」と板倉らしい鉄っぺきのディフェンスで守り抜いた
(左写真=スタンド、グラウンドとも防御は完ぺきだった。青が板倉)。今後の最大の目標は、学生の集大成として12月の天皇杯全日本選手権で表彰台に上ることだ。

 「プレッシャーに弱い板倉がプレッシャーに勝った」(太田コーチ)。技術、体力、気持ち…。心技体がそろった板倉が年末の試合でさらなる進化を見せつける!

(文=久坂大樹)



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