【特集】来夏の前哨戦! 吹田市民教室とゴールドキッズが激突!【2007年10月30日】








 10月28日に大阪・吹田市立北千里体育館で行われた押立杯関西少年少女選手権は、今年8月に全国王者(11人以上の部)の地位を陥落した吹田市民教室にとって再起戦ともいえる大会。王座を奪われた東京・ゴールドキッズが参加し、3位だった三重・四日市ジュニアと大阪・エンジョイも参加。その強さを見せて来年をつなげる絶好の機会となった。

 結果は9階級で優勝し、2位が4人、3位が9人で団体優勝。押立吉男代表は「まずは順当。実力どおりの結果が出た」と振り返り、1・2年生の部で「金3・銀2・銅3」が出たことで、「今後につながる」と話した
(右写真=団体優勝の吹田市民教室と2位のゴールドキッズ)

 上級生でも、幼児の部に出場した2002年から優勝を続け、来年7年連続全国一を目指す澤太朗選手(5年生=
左下写真)が5・6年38kg級で順当に優勝し、来年のチームを引っ張ってくれると期待する。

 増田周司理事長も「今までチャンピオンを転落した時が2度あったが、両方とも翌年は優勝した。選手、保護者一同、来年の王座奪還を目指している」も、チームが一丸となって燃えていることを強調する。

 しかし、優勝したゴールドキッズが今年は6年生主体のチームではなく、強豪がかなり残るなど警戒感も強く、単に「気合を入れて頑張ろう!」だけでは勝てないことも感じている。来月にはコーチが集まり、具体的な強化計画を練るそうで、打倒ゴールドキッズのはっきりした形が見えてきそうだ。

 吹田市民教室の指導方針は基本に忠実なレスリング。多くの技を覚えるより、タックルとガッツレンチという基本をしっかりと身につけ、磨かせることで、これまで勝ってきた。しかし、「技が大切。多くの技を使えるように」と言う元世界チャンピオンの成国晶子代表率いるゴールドキッズの出現により、軌道修正の必要を感じているという。

 増田理事長は「あくまで個人の考え」と前置きしながら、「世界の流れからしても、パワーレスリングだけでは通用しない。技術がしっかりできて、なおかつパワーをつけるという姿勢が、キッズのレスリングでも必要と思う。基本に忠実という方針を変えるつもりはないが、ひとつ、ふたつ、技のレパートリーを広げていくことも必要。選手も感じており、取り組んでいる選手もいる」と話す。来年夏には、従来とやや違った吹田市民教室が見られるかもしれない。

■ゴールドキッズの強さの秘密は数多くの大会出場

 一方、全国一になりながらも遠征しての強化を続けるゴールドキッズは、3・4年生の部を中心に「金5・銀2・銅5」の成績。この大会は、全国大会のように10選手を選んで団体戦を争うシステムではなく、出場して上位に入賞した選手すべてが団体戦の獲得ポイントになる。そのため、団体戦の成績では66選手が出場した吹田市民教室には及ばなかったが、出場25選手中12人がメダルを取った実力は、2年連続全国一を達成するに十分な結果といえる。

 その強さの秘密は、数多くの技の指導のほか、選手にできるだけ多くの大会を経験させることも一因だろう。年間の出場大会を見てみると、北は仙台から西は大阪のこの大会まで15大会を超え、他に他クラブとの合宿を年3回、1泊2日程度の合同練習を2ヶ月に1度こなしているという。

 「練習だけでは強くならない。試合出場の経験を積ませることが大事。練習でしごいたことなんて一度もない。目標を与えることで、選手たちが率先して練習するようになる。しごく必要なんてない」と成国代表。数多くの試合出場こそが全国一の原動力だったと振り返る
(右写真=選手の試合を見守る成国代表)

 しかし、学校のクラブ活動ではないため、保護者の金銭的な負担も大変ではないか? この疑問には、「今回の大阪遠征、かかった経費は1人5000円です」とのこと。からくりは、保護者の運転するワゴン車などに分乗して交通費を浮かせ、宿舎はバンガローを借りてのゴロ寝。「敷き布団がなく、床の上に毛布をかけて寝た」と笑うが、宿泊代を人数分で割ると、1人100円になるそうだ。

 「今回の遠征の一番のぜいたくは700円のスーパー銭湯に行ったこと。子供たちにぜいたくはいらない。ゴロ寝の中で団結力が高まっていく」。世界一を経験した指導者はたくましい。そして選手をたくましく育てているようだ。

 今年の大会の総決算というより、来年の全国大会の前哨戦といった感じで顔を合わせた東西の強豪チーム。9ヶ月後の対決が今から楽しみだ。

(文・撮影=樋口郁夫)


 ◎全国大会の団体戦成績

※1991年からは11人以上の部の成績。チーム名のあとの数字は得点。団体戦は1985年の第2回大会から実施

場 所 選手数 優    勝 2    位 3    位
1985 吹田市 45クラブ496選手 吹田市民教室 165 大畠スポーツ少年団 65 太平山ク 45
1986 八戸市 40クラブ457選手 吹田市民教室 75 八戸少年ク 70 木間ヶ瀬小ク 50
1987 東 京 86クラブ716選手 吹田市民教室 100 八戸ク 65 木間ヶ瀬小ク 55
1988 新潟市 65クラブ696選手 吹田市民(北千里) 90 羽島市連盟 70 焼津ジュニア 55
1989 前橋市 75クラブ867選手 吹田市民教室 100 パレイストラ 90 八戸ク 75
1990 七尾市 74クラブ837選手 吹田市民教室   マイスポーツ   木間ヶ瀬小  
1991 東 京 88クラブ1013選手 吹田市民教室 80 マイスポーツ 65 焼津リトル 50
1992 松江市 87クラブ851選手 吹田市民教室 90 島根県立武道館 85 マイスポーツ 60
1993 焼津市 91クラブ989選手 焼津リトル 95 吹田市民教室 90 杉田道場 45
1994 郡山市 91クラブ902選手 吹田市民教室 70 宇治教室、杉田道場 50 焼津リトル 50
1995 東 京 108クラブ1092選手 吹田市民教室 85 焼津リトル 75 宇治教室 60
1996 黒部市 103クラブ952選手 吹田市民教室 95 焼津リトル 65 岩井塾 60
1997 四日市 97クラブ881選手 吹田市民教室 100 四日市ジュニア 70 焼津リトル 65
1998 北九州市 87クラブ731選手 吹田市民教室   焼津リトル    四日市ジュニア  
1999 秋田市 89クラブ753選手 吹田市民教室   四日市ジュニア   マイスポーツ  
2000 東 京 123クラブ1075選手 焼津リトル 75 ウエノハラ 75 吹田市民教室 70
2001 石川・志賀 109クラブ 893選手 吹田市民教室 80 高田道場 55 沼津ク 40
2002 大阪市 124クラブ1110選手 吹田市民教室 80 沼津ク 55 エンジョイ 55
2003 東 京 136クラブ1195選手 吹田市民教室 80 今治少年 40 エンジョイ 35
2004 東 京 124クラブ1260選手 吹田市民教室 90 AACC 70 エンジョイ 50
2005 四日市 138クラブ1197選手 吹田市民教室 100 四日市ジュニア 50 エンジョイ 50
2006 東 京 165クラブ1399選手 吹田市民教室   エンジョイ   ゴールドキッズ  
2007 東 京 172クラブ1474選手 ゴールドキッズ 95 吹田市民教室 65 四日市、エンジョイ 55


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