【優勝選手特集】男子フリースタイル66kg級・池松和彦(K-POWERS)【2007年12月22日】








 男子フリースタイル66kg級はアテネ五輪5位の池松和彦(K-POWERS)が復活を遂げようとしている。アテネ五輪が終わってから、「池松」の名は低迷が続いていた。本人も「いわゆる燃えつき症候群だった」ことを認める。

 アテネの頃の池松は、タックルで攻めるアクティブなレスリングが魅力だった。かしルール改正もあってか、その持ち味が影に隠れた。その間の池松は、悩んでいるかのような顔で試合に臨んでいた。辞めようと思った時期もあった。それを引き止めたのは、“引退後の自分の像”だった。「引退してから後悔したくない」。それまでの自分を見つめ直し、「まともな練習をやってこなかった」と自分に鞭打った。

 今大会は最後のつもりで臨んだという。「これで燃え尽きるぐらいのつもりで練習してきた」。その意気込みが、試合に現れた。決勝の相手は昨年度王者の小島豪臣(周南システムズ産業)。大学の後輩であり、いつも練習している仲だ。

 第1ピリオドはコイントスで攻撃の権利を得て、1−0とするも、第2ピリオドではがぶり返しを受けるなど相手のペースにのまれた。第3ピリオドに入ると、小島に比べ明らかに疲労の色が見えていた。しかしラスト20秒のところでポイントをあげるという執念の勝利。3年ぶりの優勝を手にした
(左写真=3年間のトンネルを抜け日本一にに返り咲いた池松)

 「勝ったのはうれしい。でも、完全に相手のペースだった」と試合を厳しく振り返る。今の池松にとっては、勝利だけがすべてではない。毎日小島と練習をしていて、自分はまだ小島の力には及ばないと感じている。今は、「強くなりたい」という貪欲さもあり、「自分のレスリングを追及したい」と、気持ちを大きくもっている。

 低迷中はいろいろあった。だが、それを乗り越えた今、池松のレスリング道は良い方向へ動いているのかもしれない。「多くのサポートがあって選手が成り立っている」ことに本当の意味で気づくなどの成長もあった。まだ完全復活とは言えないだろう。しかし、再び輝ける道へ、大きな一歩を踏み出した。

(文=神谷衣香、撮影=矢吹建夫)



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