【優勝選手特集】男子フリースタイル74kg級・長島和幸(クリナップ)【2007年12月23日】








 アテネ五輪代表の小幡邦彦(ALSOK綜合警備保障)がクラスを上げ、混戦模様の男子フリースタイル74kg級を制したのは、昨年の覇者、長島和彦(クリナップ)だった。

 順調に決勝まで勝ち上がった長島とは対象的に、トーナメントの逆サイドは波乱の連続だった。まずは第1シード、今年の世界選手権に出場した萱森浩輝(新潟・新潟中央工高教)が10月の国体を制した高橋龍太(自衛隊)に敗退。ところが勢いに乗るかに見えた高橋もあっけなく姿を消す。国体王者の足元をすくったのは、何と今年の高校三冠王者の高谷惣亮(京都・網野高)だった。

 高橋を下した高谷は準決勝で長島の双子の兄、正彦(おおたスポーツ学校)と対戦すると、高校生らしからぬ落ち着いた試合運びと粘り強いディフェンスで互角の勝負を展開。第3ピリオドにしぶとくタックルを決めて逃げ切り、決勝にコマを進めた。

 高校生を迎え撃つことになった長島は、やりにくかったことだろう。第1ピリオドを2−1で先制するも、第2ピリオドをラストポイントで献上。続く第3ピリオドは互いにポイントを奪えないまま、運命はコイントスにゆだねられる。レフェリーの弾いたコインが高谷のコーナーである赤を示すと、会場からドッと歓声が沸き起こった。

 絶体絶命のピンチを迎えた長島はここで抜群の集中力を発揮した。片足をクリンチされながらバランスを保ち、少しずつ押されながらゾーン際で体をひねり、あわや金星という高校生を場外に押し出した
(右写真=高谷に苦しめられた長島だが、最後は優勝)

 ヒヤヒヤの勝利に長島は「高谷君とは普通にやれば勝てると思ったけど、夏に練習したことがあって、得意な腕取りを封じられて苦しんだ。納得のいく内容ではなかったけど、勝てて良かった」とほっとした様子だった。

 もちろん国内大会で優勝して安心してる場合ではない。北京五輪を見据える長島は「まだアジアで通用する力はないけど、すべてにレベルアップして出場権を獲得したい」と気持ちを引き締めていた。

(文・渋谷淳、撮影=矢吹建夫)



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