【優勝選手特集】男子グレコローマン74kg級・岩崎裕樹(ホテル銀水荘)【2007年12月23日】








 諦めない気持ちがどれだけ大切かを、男子グレコローマン74kg級の岩崎裕樹(ホテル水荘)の優勝で思い知らされた。日体大時代には学生二冠王に輝き、2005年には世界選手権にも出場したエリートは、2006年初めに挫折を味わうことになる。右太もも裏のハムストリングを断裂してしまい、肉離れの手術に踏み切った。

 「打ち込みができるようになるまで4か月かかった」と焦る気持ちを抑えながら復活の時を待った。しかし、けがを克服して出場した06年の全日本選手権は準優勝。で、今年の全日本選抜選手権は3位に甘んじて世界選手権の代表を逃してしまった。

 「27歳なので、北京五輪が最後の挑戦だと思っている」と試合後に明かした岩崎。07年世界選手権の出場を逃し、最後と自分で決めている五輪出場を果たすために、今大会に臨んできた。

 決勝進出までも決して順風ではなかった。準決勝で対戦した菅太一(警視庁)は06年の全日本王者。岩崎はその大会で菅に敗れて復活優勝を阻まれている。だが、通算成績で上回る岩崎が菅を凌駕(りょうが)した。ポイント0−0からクロスボディロックを守り抜いて1Pを奪い、攻守逆転のあとはローリングで2ポイントを奪って第1ピリオドを先取。第2ピリオドも奪って決勝へ駒を進めた。

 決勝に勝ち上がってきた鶴巻宰(自衛隊)は半年前の選抜選手権で苦杯を喫した相手。この敗北で世界選手権代表の座も奪われてしまった。その鶴巻との試合は一進一退そのもの。差し出争いから両者ともポイントが奪えない。グラウンドの攻防は1−1のラストポイントで岩崎が第1ピリオドを取ると、第2ピリオドも第1ピリオドと同じ展開へ。やはり1−1ながらもラストポイントで岩崎が取り、2年ぶりの優勝を飾った
(左写真=鶴巻との接戦を制して王者に返り咲いた岩崎)

 「コンディションが良かったのもありますし、今の自分の持てる力を出し切れたことが優勝につながったと思います。地道に練習を続けていれば、結果はついてくると自分自身を信じていました」。初の全日本制覇の直後にけがというアクシデントに見舞われたが、焦らない、そして諦めない気持ちが、夢がかなうことをこの大会で実証してみせた。

 決して完勝といえる優勝ではなかったが、完勝ぷりを最終予選と北京五輪で見せてくれることを期待したい。

(文・三次敏之、撮影=矢吹建夫)



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