【特集】女子でも台頭を始めたハンガリーのリーダー、マリアナ・サスティン【2006年2月22日】






 【オーストリア・ヴォルフォルト発=ビル・メイ記者】男子グレコローマンで世界トップ級の実力を持ち、男子フリースタイルでも五輪金メダリストを輩出したことのあるハンガリー。昨年9月の地元開催(ブダペスト)の世界選手権では、女子59kg級のマリアナ・サスティンが銀メダルを取り(左写真の左=右は優勝した正田絢子)、同国女子で史上初のメダルを獲得。女子も世界一への挑戦が始まった。

 サスティンは世界選手権後の約4か月、目立った活動はしていなかった。しかし2月10〜11日にオーストリアの西部ヴォルフルトで行われた大会に出場し、決勝でオーストリア選手を破って優勝
(右写真)。今年の世界選手権でのメダル獲得へ向けて順調な調整を見せている。目標は銀色だったメダルを金色に変えること。そのために、やるべきことは“打倒ジャパン”だ。

 女子59kg級は、03年世界選手権(米国ニューヨーク)で山本聖子が優勝、05年は正田絢子が世界一に輝いた。アテネ五輪では実施されなかったので、日本選手が2大会連続で世界の最高峰を占めている階級だ。サスティンはその両大会で日本選手に敗れ、世界一への道を阻まれている。

 サスティンは「私はニューヨークでセイコ・ヤマモトと、昨年はアヤコ・ショウダと闘った。2人ともとてつもなく強いことを知っている。しかし、もう1度闘いたい」とリベンジへの気持ちを話す。「どちらかといえば、アヤコと」とつけ加えたのは、地元で黒星をつけられた悔しさのせいか。

 ニューヨークでは準決勝で山本聖子と対戦しフォール負けだった。昨年のブダペストでは、決勝で正田に0−4、0−6と完敗。どちらも世界チャンピオンとは大きな実力差を見せつけられている。しかし、米国代表のサリー・ロバーツとの試合を通じて、彼女の成長ぶりが分かる。03年の3位決定戦ではフォール負けしていたが、昨年の準決勝での対戦は7−4、7−6で快勝。ロバーツの上を行く成績を残した。進歩しているのは確かだ。

 すでに4月の欧州選手権(モスクワ)への出場を決めているという。「昨年優勝のイダテレス・カールソン(スウェーデン)を筆頭に、欧州の59kg級にはいい選手が多い。でも、私は金メダルを取りたい」。昨年の欧州選手権は、2回戦でカールソンに0−1、0−3で敗れ、敗者復活戦でイタリアのベテラン、ディレッタ・ギアンピッコロに0−2、0−2で敗れて7位に終わっていた。世界2位となり、世界一奪取を狙う今年は、何としても優勝しなければならない大会となるだろう。

 2008年北京五輪では59kg級が実施されないため、63kg級に上げて夢の舞台出場に挑戦するつもりだ。「大変な道のりであることは分かっている。でも、夢の実現へ向けて、希望を持ち続け練習を続ける」ときっぱり。22歳のハンガリー女子レスリングのリーダーは、1階級上の階級での五輪出場に挑むことを宣言した。
(左写真=オーストリアの大会の決勝で闘うサスティン)

 今回のオーストリアの大会で、ハンガリーはシニア3階級で勝ち、7個のメダルを獲得した。ラスロ・バタイ・コーチ、そして小林孝至選手を破ったこともあるラスロ・ビロ・コーチはこの結果に満足そうだが、ヨーロッパのベストチームと呼ばれることは拒否した。「まだベストのチームではない。昨年の地元での世界選手権は、私たちに大きなエネルギーを与えてくれた。これから、もっと強くなるんだ」。

 世界選手権での国別対抗得点の成績は8位。しかし欧州の国としてはロシア、ウクライナに次いで3番目の成績を残し、女子の先進国だったフランスやスウェーデン、ノルウェーを追い越した。男子で基礎のある国だけに、女子での進歩も急速な速さで進みそうだ。

(撮影=ビル・メイ、世界選手権の写真は矢吹建夫)


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