【特集】ALSOK綜合警備保障でのデビュー戦を飾る…48kg級・伊調千春【2006年3月29日】






 48kg級の伊調千春(ALSOK綜合警備保障)が12月の全日本選手権に続いて決勝で坂本真喜子(和光ク)をピリオドスコア2−0で破り、48kg級を制した。これによりプレーオフなしでの世界選手権出場を決めた。

 全日本選手権では2−0で坂本を破ったとはいえ、2ピリオドとも無得点のままクリンチにもつれ込んだ。だからこそ、「今回は自分からポイントをとりにいきたかった」。第1ピリオドは両者譲らぬ攻防で無得点のまま2分間を終えた。コイントスで伊調にクリンチの権利が与えられ、そのまま倒してピリオドを先取した。

 大2ピリオドに入ると伊調の動きが切れを増した。開始早々前に出てきた坂本をかわし、逆に片足タックルから1点を奪う。その後も積極的にプレッシャーをかけて1点を守り抜いた。

 中京女大を卒業し、所属を綜合警備保障に移して初めての大会。大橋正教監督は「常に前に出て、相手に本来のレスリングをさせずにミスをさそう、伊調らしい形ができていた」と評価した。

 勝因として、「伊調が自分のレスリングを知り尽くして試合に臨んでいた」(大橋監督)ことが挙げられる。決勝前、相手のビデオは見ずに自分の試合のビデオだけを見たという。相手に意識を置くのではなく、自分に一番合った戦いができるようになったことが大きな成長だ。

 これまでは精神面の課題も指摘されたが、今大会の伊調は終始落ち着いていた。気持ちが強くなれたのは、「仲間がいるから」。妹・馨の存在はもちろん、応援にきてくれた両親や友人、会社のみんな。そして「今日は中京女子大の仲間で金色のゴムをつけて臨んだ。一人じゃないという気持ちになって心強かった」。伊調も右足のテーピングの下に金色のゴムをつけていた。

 「アテネの時より間違いなく強くなっている」と大橋監督のお墨付きをもらった伊調。悔しい思いの積み重ねから得た『自分自身のレスリング』とたくさんの仲間がいる『心強さ』を手に、世界選手権で「妹と一緒に金」という一途な目標に挑む。

(文=神谷衣香)


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