【特集】やっと芽を出した早大のスーパールーキー、大月葵斐【2006年4月24日】






 昨春、スーパールーキーとして早大の門を叩いた大月葵斐が、JOC杯ジュニア・フリースタイル74kg級を制した。大分・日本文理大付高時代は5冠獲得(国体2度、全国高校選抜大会、インターハイ、JOC杯カデット各1)の実力者だった。しかし昨年のJOC杯では決勝で秋本直樹(日大)に敗れ、華々しいデビューとはいかなかった。直後はひどく落ち込んだという。それから1年間で得たタイトルは、東日本学生秋季新人戦のみ。周囲からの厳しい声もあっただろう。

 好不調の波が激しい。それは本人が一番よくわかっている。記憶に新しいのは、3月末に行われた全日本選抜選手権予選会だ。1回戦で新井智明(拓大)に0−2(0-3,1-2)で敗れ、6月の全日本選抜選手権への道が閉ざされた。「前まで勝っていた相手に負けて、悔しかった」。

 その予選会は、「勝てるかな」というすっきりしない心境で臨んだそうで、それがそのまま試合に出てしまった。今大会は、「絶対に優勝できると自分に言い続けた」という。

 決勝の相手は、準決勝で新井を倒した高校生、山名隆貴(奈良・添上高=全国高校選抜大会2位)。早大の太田拓弥コーチが「細かくつなげるレスリングができ、いい形だった」と言うように、腕取りからの攻撃などキレのある動きで点を重ね、2−0(3-0,6-0)と圧勝だった。

 本音を言えば、「(新井と当たって)予選会のリベンジがしたかった」。しかし、新学年になっていいスタートを切れたことは大きい。大月の口からすぐに飛び出した言葉は、「インカレ」だった。「昨年、インカレもとらなければいけなかったと思う。結果が命なので、一番上を目指さないと」。大月の目線は、常に頂上へ向いている。

 「まだ持っているものを出し切れていない」と太田コーチ。この優勝をはずみに飛躍し、高校五冠王者の真価を見せてほしい。

(取材・文=神谷衣香)


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